シリアと中東の今後

 トランプ大統領は、5月中旬に中東を歴訪し、対シリア制裁を解除する方針を明らかにした。  シリアでは、2024年11月27日、50年にわたって独裁を続けてきたアサド政権に対して、反政府勢力が大攻勢を開始し、12月8日にアサド政権を崩壊させた。アサド大統領は、ロシアに亡命した。 その背景には、アサド政権を支援してきたロシアがウクライナ戦争に集中せざるをえなくなり、シリアにまで手が回らなくなったこともある。 この政変劇を主導したのは、イスラム過激派組織「シャーム解放機構(ハヤト・タハリール・アル・シャム、HTS)」である。アメリカは、これまで HTSをテロ組織に指定していた。  シリアの内戦は10年以上も続き、国外に難民として約600万人が国外に出て、国内避難民も720万人にのぼる。たとえばドイツは約56万人を受け入れており、そのため移民問題が大きな政治的争点となっていった。移民排斥を掲げる極右のAfD(ドイツのための選択肢)が躍進するなど、ドイツ政治に地殻変動をもたらしている。 それは、ドイツにとどまらず、欧米諸国に広まる傾向であり、その震源地となったのがシリアである。その意味で、今後のシリアの動向は、国際政治に大きな影響を及ぼす。  アメリカでは、2017年1月にトランプが政権に就き、2018年4月にはトマホークミサイルでアサド政権側の施設を攻撃した。しかし、2019年になると、それまでのアサド政権打倒という政策を転換して、ロシアと共にIS掃討することを最優先にするとしたのである。そして、この年10月には、トランプは、シリア北東部から米軍を撤退さ続きをみる

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