病原体の黙示録

 新型コロナウイルスが世界中で猖獗を極めている。 感染症の歴史を振り返ると、多くの死者を出した病原体の蔓延は、国際社会の覇権構造の変質や文明の交代に大きな影響を与えた。たとえば、ペストの大流行が中世ヨーロッパの封建制を崩壊させたと言ってもよい。 ところで、世界システム論の観点から歴史を振り返ると、30年間にわたる戦争の結果、覇権国が交代する。 世界システム論とは、国際社会を一つのシステムと考えて、それが歴史的にどのような変遷をとげていったかを考察するものである。 歴史をふり返ると、世界システムは、古代には世界帝国として現れる。たとえば、中国、エジプト、ローマなどである。もう一つの形は、15世紀末にヨーロッパに誕生した世界経済であり、これは世界帝国に転化することなく、内部に多くの政治システムを抱えながら、今日に至っている。 ある一国の経済力が圧倒的に強くなって、その国が生産する商品の競争力が他のすべての国に対して優勢になるような状態を「覇権(ヘゲモニー、hegemony)」と呼ぶ。そのようなヘゲモニーを享受したのが、1625~1675年のオランダ、1815~1873年のイギリス、1945~1967年のアメリカである。  表5−1:国際続きをみる

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