感染症の危機管理:新型インフルエンザ対応の教訓(15)重症者・死者を出さない対策が重要

 今回の新型コロナウイルスの感染拡大は、まだフェーズが6、つまりパンデミックにはなっていない。しかし、新型インフルエンザのときはそうではなかった。 2009年6月11日夕方、WHOのマーガレット・チャン事務局長は、警戒水準をフェーズ5から最悪のフェーズ6に引き上げ、「世界的大流行(パンデミック)である」とした。 しかし、弱毒性なので、「国境を閉鎖したり、国際的な貿易や移動を妨げたりする必要はない」と言明した。日本政府の対応については、22日に決めた基本的対処方針は変える必要はないというのが私の考えであった。 しかしながら、感染が全国的に拡大しており、医療の現場で混乱が続いている状況があるため、感染者は入院させずに原則自宅療養とさせたり、発熱外来を廃止したりするなど、行動計画の運用のさらなる弾力化をする方向で検討を始めさせた。 他方では、一日も早く新型インフルエンザワクチンの製造を始め、できるだけ多くのワクチンを確保する必要があった。そこで、生産計画を作らせ、7月中旬に製造を開始すると年末までに2500万人分を確保できるという試算を、6月9日に公表した。 ワクチン製造については、新型インフルエンザと季節性インフルエンザの製造比率をどうするかが問題であった。新型インフルエンザワクチンばかり作って、もし季節性インフルエンザが猛威を振るったらどうなるか。 そこで、季節性インフルエンザワクチンは、続きをみる

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