パックス・シニカを阻止できるか?

  世界で中国の存在感が増している。  世界第2位のGDPを誇る中国は世界に商品を供給するとともに、14億人の人口を抱える巨大市場として海外から大量の物資を輸入している。  軍事的には核大国として軍拡を進め、とくに海軍力の膨張は凄まじく、太平洋、インド洋を中心に軍事拠点を整備するのに余念がない。航空母艦も保有し、アメリカに対抗できる軍事力の保持に努めている。台湾に軍事侵攻し、統合する意図も隠していない。 習近平の狙いは、中華人民共和国建国100年の2049年までに、中国をかつてのように世界一の大国に引き上げることである。「アメリカが支配する世界(パックス・アメリカーナ)」から「中国が支配する世界(パックス・シニカ)」への移行である。しかし、習近平の夢が簡単に実現するわけではない。 経済的には、中国の不動産大手、恒大集団の経営危機である。今の中国は、このバブル期〜バブル崩壊期の日本が再現されたような状況である。投機熱も加わって、不動産価格は上昇し、それで巨万の富を得た層と、高価なマンションなど高嶺の花の庶民との格差が広がっている。そして、儲け話に乗る人々の投資熱は続いている。習近平は、この状態を危惧し、「共同富裕」をスローガンに格差是正に取りかかったのである。 昨年夏に、マネーの蛇口を閉める日本の総量規制と同じ対策を発動した。中央銀行は、①総資産に対する負債の比率が70%以下、②自己資本に対する負債比率が100%以下、③短期負債を上回る現金を保有していることという3つの財務指針を設定したのである。 恒続きをみる

『著作権保護のため、記事の一部のみ表示されております。』