こんばんは、音喜多駿(参議院議員 / 東京都選出)です。
閉会中審査で各種委員会で質疑が行われる一方、相変わらず一部野党は「野党合同ヒアリング」という名目で官僚の負担を増やし続けているようです。
今日もひどい光景がネット上で話題となっておりますので、一言だけ苦言を呈したいと筆を執ります。
きっかけはこちらの論文。
日本ではGoToトラベルが新型コロナの感染拡大に寄与しているかと議論されています。私達の研究結果*によると、GoToトラベルの利用者は、新型コロナ感染を疑わせる症状をより多く経験していました。*未査読論文@AMiyawaki38 @TakahiroTabuchi https://t.co/sfBzlMH3fVhttps://t.co/UHtoIQbZKH
— 津川 友介 (@yusuke_tsugawa) December 6, 2020
こちらを根拠に立憲民党は「政府のGoToキャンペーンが新型コロナウイルスの感染を拡大させた!」と政府批判・断罪を試みたいようです。
しかし上記Tweetでも明らかなように、これはあくまで現時点では「GoToトラベル利用者は、コロナ疑いの症状を多く経験している」という相関関係を示したものに過ぎません。
原口先生、お願いですから、因果関係と相関関係の違いを勉強してから、厚労省職員を詰めてください…
厚労省
GoToと感染者の”因果”関係は断定できない。筆者もそう言っている。原口一博議員
私は論文を読んだ。断定的に言っている。論文の何行目か?— おもち@元官僚系YouTuber (@ex_kanryo_mochi) December 8, 2020
ところがこれを、
「論文著者は因果関係があると断定している!」
「私は論文を読んで言っている。因果関係がないとどこに、何ページに書いてあるんだ」
「人様の論文にそこまで言うなら、何行目に(因果関係はないと)書いてあるのか言いなさい」と詰め寄る議員が発生したのだから、絶望しかありません。
しかし動画を見ていただければおわかりの通り、むしろ論文には「強い相関関係がある」「一定の影響がある可能性がある」としか書いてないんですよね。
これは典型的な、相関関係と因果関係の取り違えです。
AとBが関係しているからといって、Aの原因がBだとは限らない。中学生くらいで習う論理ですね。
ところが経済学でも感染症対策でも、どういうわけかこれを(意図的に?本当に無知で?)取り違える政治家や有識者が多発しています。
さらに絶望が深いのは、この某議員と厚労省官僚のやり取りを、立憲民主党の公式アカウントが鬼の首を取ったように発信しているところです。動画に字幕までつけて。
厚労省官僚が「論文そのものを見ていない」と言った部分で、なにやら自らの「勝利」を確信したのでしょう。熱心な支持者が歓喜すると思ったのでしょう。
しかし元の論文に目を通すのも大事なことですが、サマリーであっても中身を正確に理解していること方がよっぽど重要です。
私達は、原著論文(DiscussionのLimitation部分)にも、日本語版のプレスリリースにも「今回認められた関係が因果関係であるかどうかは分からない」と明記しています。また”相関”関係と”因果”関係とは違うものです。プレスリリースで「可能性がある」という表現を使っているのは、断定できないからです https://t.co/Aq3HheH59d
— 津川 友介 (@yusuke_tsugawa) December 8, 2020
あまりのひどさに見かねてか、論文執筆者である津川先生が厚労省サイドに立ち、
「因果関係があるとは言ってないですよ」
「論文だけでなく、プレスリリースにも特出ししてそう書いてありますよ」と立憲民主党の公式アカウントにリプライされたほどでした。
津川先生の良識ある誠実な態度に敬意と感謝の意を表するとともに、立憲民主党と当該議員は自らの勘違いで公衆の面前で追い詰めた厚労省官僚に対して、謝罪・撤回などなんらかの対応を行うべきではないでしょうか。
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こうした政治家→官僚へ公然と(時に間違った・履き違えた)圧力がかかる野党合同ヒアリングは、明らかにメリットよりもデメリットの方が大きいのではないでしょうか。
参考記事:
私が新立憲民主党を全く期待していない理由 〜アイデンティティの政治の罠にハマったリベラル政党〜
https://blogos.com/article/499816/元経産官僚である宇佐美典也氏も、野党合同ヒアリングを「パワハラそのもの」「心を病むものが出てきており、人権侵害の域に達している」と厳しく糾弾しており、私も同感です。
官僚の働き方改革に熱心な心ある議員がいる一方で、このような事態が起きることは本当に申し訳ないばかりですが、なんとか国会改革を進められるよう世論の力を借りながら私も尽力し、情報発信を続けていきたいと思います。
それでは、また明日。