不祥事を起こした国会議員、その「歳費」を差止めることは可能か?憲法違反か?

こんばんは、音喜多駿(参議院議員 / 東京都選出)です。

自民党を含めて、にわかに不祥事を起こした国会議員の「歳費返納・差止め」についての法案検討が活発になっています。

歳費法改正の動き急拡大 当選無効でも議員受給で―今国会実現は不透明
https://www.jiji.com/sp/article?k=2021051500349&g=pol

これまで歳費問題に見向きもしなかった自民党&公明党が突然に焦りだしたのは、先の参院補選・広島選挙区で手痛い敗戦を喫したからでしょう。

河合杏里氏の辞職に伴い行われた補選では、

「当選無効になったのに、のうのうと税金から全額給与を受け取ったままなのはおかしい」

という批判が相次ぎ、保守地盤が強い広島県でも自民党公認候補が落選の憂き目に遭いました。

これを受けて「このままでは選挙に勝てない、自浄作用を見せて選挙にアピールしなければ」という邪な思惑が先行しているのだと思いますが、いずれにせよ歳費法案が議論されるのは良いことではあると思います。

さて、小政党ゆえ大きく報じられることはありませんでしたが、こうした「不祥事を起こした国会議員の歳費を停止・返還できないか」という点は、維新は党としてすでに年初から検証に入っています

2021年3月5日のTweet

3月初旬には、憲法学者を招いて法的問題点を整理・議論も致しました。

不祥事を起こした国会議員の歳費(いわゆる報酬・給料)を差し止めよう・返させようとすると、大きく2つの方向性が考えられます。

・逮捕や起訴などのタイミングを契機として、歳費等の支給を取りやめる(無罪が確定したら停止分もまとめて再支給)
・当選無効と議員失職が確定したら、さかのぼって当選時からの歳費をすべて返還させる

まず我々が検討したのは前者のパターンですが、これは憲法学者からも「意見の疑いがある」と指摘をされました。

地方議員の場合はすでに、逮捕などをきっかけに議員報酬を差止める条例案を策定している自治体もあります。

「え、そんなの当たり前でしょう。なぜ国会議員でもやれないんだ!」

というのが一般的な考え方かと思いますが、これを国会議員に当てはめるには憲法の壁が存在します(※地方議員の場合でも、推定無罪の原則から法的な疑義は残っています)。

国会議員は憲法50条に不逮捕特権、憲法51条に免責特権など、その立場を守るための仕組みがビルトインされています。

これは時に権力者と対峙をする国会議員を守るための措置で、それなりの意味を持つものです。

これに鑑みれば、有罪や議員失職などが確定する前から待遇そのものである「歳費」を差し止めるということは、憲法違反になる疑いが強いということですね。

では後者の場合はどうか。今回の河合杏里氏のケースに照らせば、当選してから約2年間が経過していますから、約2年分の歳費(約3,000万円)を一括して返還せよということになります。

これが果たして現実的に可能なのかという点と、冒頭の記事で自民党議員が発言しているように「(議員失職が確定するまで)実際に働いた分まで没収すれば財産権の侵害になる」という懸念は残ると思います。

実際、不祥事で「当選無効」となった場合でも、その時点までに議員が行った採決などの投票は「有効」とされています。

さかのぼってすべてを無効にすると混乱が大きすぎるという理由ですが、この整理に則れば、歳費をすべて返還させることにも疑義が生じるでしょう。

ということで「なぜそんな簡単なことができないんだ!」という民意は非常にもっともながらも、法的・憲法的なハードルはかなり高いというのがこの歳費法の課題なのです。

各政党がこうしたハードルにどのように向かっていくのかは興味が尽きませんが、維新としては現在

・歳費は「自主返納」ができる仕組みとする(逮捕時などから歳費の返納をしなければ、さらに厳しい民意が向かうようにする)
・期末手当、立法事務費、文書通信交通滞在費など「歳費」に含まれない部分については、逮捕などのタイミングから支給を速やかに停止する

というハイブリッド案を法制局と調整・検討中です。

今国会中の成立を目指し、引き続き活発な議論を続けてまいりますので、ぜひ世論の強い後押しをいただければ幸いです。

それでは、また明日。

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