要介護の利用者宅に訪問して身体介護や生活援助のサービスを行う訪問介護。
訪問介護のサービスもより自立支援を意識したサービス内容が求められるようになりました。
今年四月の介護保険の改定に伴い、見守り的援助という位置づけで、調理や掃除などの家事動作を含めた生活動作を利用者が自分自身で行うことができるよう支援する。
それを身体介護として認め、具体的な支援内容を提示しました。
ホームヘルパーは利用者が安全に実施できるよう、転倒予防のための見守りや必要な声掛けなどを行います。
はっきり言ってしまえば、家事をホームヘルパーが全部やってしまった方が簡単だし時間もかかりません。
ただ、それでは利用者はサービスへの依存心を高めるだけで、自立促進につながりません。
いわばお手伝いさん・家政婦に近いサービスという認識を高めてしまう危険性もあります。
そこで自立支援のための見守り的援助が今回具体的に示されました。
・利用者と一緒に手助けや声かけ及び見守りしながら行う掃除、整理整頓(安全確認の声かけ、疲労の確認を含む)
・ゴミの分別が分からない利用者と一緒に分別をしてゴミ出しのルールを理解してもらう又は思い出してもらうよう援助
などが具体例として記載されています。
お世話型の介護から自立支援型の介護へ。
訪問介護というサービスを提供するその先が、利用者の自立を見据えた専門性の高い介護でもあります。
これらのサービスは家事を代行して行う生活援助ではなく、身体介護のサービスとして位置付けられます。
身体介護は掃除や買い物・調理など家事の援助をする生活援助よりも高い報酬単価が設定されています。
生活援助のサービスは一回一時間223円の自己負担でサービス利用ができるのに対し、身体介護になると一回一時間394円の自己負担が必要になります。
(地域加算が設定してあるため、地域によって金額は紹介した金額よりも高くなる場合があります)
これが利用する側にとっては混乱を招く原因となります。
今まで行っていた支援はホームヘルパーに掃除や調理をしてもらっていたのに、身体介護に位置づけられる見守り的援助の場合はヘルパーは安全確認のための見守りや声かけをしているだけ。
それなのにどうして自己負担の金額は高くなるのかという意見があります。
サービスを提供する事業者だけでなく、利用者側の意識も変わっていかなければ、訪問介護が自立支援を目指すための見守り的援助は定着していかないでしょう。
ケアマネジメントも含めた利用者の意識づくりも重要な課題になります。
また、それ以上に大きな問題なのが訪問介護を支える人材不足です。
平成29年度の介護労働実態調査の結果によると、訪問介護事業所全体のうち、82.4%の事業所が訪問介護員が不足していると回答しております。
訪問介護の人材不足は非常に深刻な状況にあります。
介護報酬単価が低いため設定されている給与も低いことや、勤務時間などが不安定なことなど、
様々な要因もあり、訪問介護の人材不足は深刻さを増しています。
専門性を求められながらも定着率が低い訪問介護の人材が充足していくことが、自立支援介護を目指す地域包括ケア体制の成否の大きな鍵になるのではないでしょうか。