文化庁補助金を全額交付せず「あいちトリエンナーレ」

愛知県が文化庁に補助金交付を申請していた「あいちトリエンナーレ」に対し、文化庁が補助金を全額交付しないことを決めたと昨日報道がなされた。

これはまずい。

確かに今回の芸術祭の一つの企画展である「表現の不自由展」に対しては、私自身、不愉快であるだけでなく、公の事業として適切なのかどうか疑問に感じていた。外部の検証委員会も「表現の不自由展は政治性を帯びた作品が多いなど欠陥」と指摘している。

すでに、本年4月、国はあいちトリエンナーレを「文化資源活用推進事業」として採択。補助金約7,800万円を交付する予定だったとうかがっている。しかし、騒ぎが大きくなったこの時点での全額不交付決定は、国が地方自治体がおこなう芸術展の内容までチェックしているかのような印象を県民・市民に与えかねず、そのこと自体、政権にとってマイナスだ。「表現の不自由展」が開始早々中止されたため、その部分のみの補助金を削減するなどの措置が適切ではなかったのかと考える。

一方、国の決定に伴い、河村市長も本市の負担金の執行停止をおこなうとすれば、より問題は大きくなる。あくまでも国は主催者ではなく事業を支援する立場であるのに対し、名古屋市は愛知県と共催の立場をとる。にもかかわらず、途中で負担金の支出を止めるようなことがあれば主催者の撤退となりその責任は問われることになる。

ただ、この間、愛知県と名古屋市との関係もぎくしゃくしていた。「表現の不自由展」に対する第三者による検証委員会にも名古屋市は参画できていない。一方、河村市長が指摘する通り開催主体である実行委員会も全く開催されていないのも問題だ。いくら知事と市長が話し合いができない状態とはいっても、税を使っている以上、そんなことは理由にはならず実行委員会は速やかに開催されるべきだろう。

この後、愛知県は国に対し不服申し立てや不交付決定の取り消しを求めて提訴するなどとしているが、全額不交付が妥当だとする判断が出る可能性は、私は微妙だとみている。

いずれにしても、文化庁にとってこの地域は「鬼門」。文化庁、愛知県、名古屋市に政権まで巻き込んだ紛争に発展しなければいいのだが...
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横井利明
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