名古屋城天守閣の解体にかかる現状変更許可申請にかかる「副申書」について、名古屋市会教育子ども委員会決算審査で集中的に議論がなされた。
この「副申書」は教育委員会文化財保護室が作成し教育長名で文化庁に出されたもの。観光文化交流局が作成した名古屋城天守閣解体にかかる現状変更許可申請にあたり、同申請が適切であるということを文化財保護の観点から証明するためのものでもある。したがって、「副申書」がなければ、現状変更許可は受理されない。
教育子ども委員会では、「副申書」が非公開のままでは審議できないとして紛糾。その結果、教育委員会は「副申書」原本の公開ではなく、要約という形で「副申書」を公開した。なお、「副申書」を非公開とした理由は、公文書公開条例の内、国において審査中のものは非公開とするという項目に該当するため。公表された「副申書」は以下の通り。
■ 特別史跡名古屋城跡の現状変更(天守閣解体)にかかる副申について
〇 現天守は耐震性が極めて低く、コンクリートの中性化も進行し、外壁が剥落しているなど、危険な状態であり、解体することはやむを得ない。
〇 穴蔵石垣の現況を正確に把握するための調査を実施するには、現天守の解体が必要となる。
〇 現天守閣解体の施工方法は、天守台石垣に触れない、工事に伴う振動を極力抑えるなど、天守台石垣に直接影響を与えることがないよう配慮された計画となっている。
〇 解体工事に伴う仮設物、解体に使用する揚重機等が史跡に与える影響については、工学的側面から十分に解析が行われている。仮設物が地下の遺構に与える影響については、事前の発掘調査及びその結果を踏まえた検討を行うことを盛り込んだ計画である。その手順が十分担保されることを前提に、特別史跡に及ぼす影響は軽微であると考えられる。
〇 施工に際して、本市教育委員会埋蔵文化財担当学芸員が立ち会い、特別史跡の保全に十分に配慮した内容で実施されていることを確認する。
〇 事前の調査・検討の結果、申請する施工内容では不十分と判断される結果が判明した場合には、施工内容を変更することを許可の条件とする。
上記副申の問題点を挙げればきりがないが、ひとつは文化財を守るべき文化財保護室が文化財の保護という観点に欠けた副申を出していることがあげられる。例えば、「現天守は耐震性が極めて低く・・・解体することはやむを得ない。」の部分においては、耐震性が低ければ耐震化するという手法もあるだけでなく、危険な部分があれば除却したり修復したりする手法もあるにもかかわらず、理由と内容の整合が取れていない。
また、「穴蔵石垣の・・・調査を実施するには、現天守の解体が必要」などは、現天守閣の床を一部除却するなどの手法等も考えられるにもかかわらず、短絡的に「解体が必要」としている点もある。
今回明らかとなった「副申書」の内容。本市の文化財保護のあり方が問われることになる。