現存する世界最古のものとされる昭和10年式メルセデス・ベンツ社製機械式はしご車の修復が一歩一歩進んでいる。
このはしご車は、名古屋でも建設が進んでいた高層建物の火災に備え、昭和10年に企業や市民から多額の寄付をいただき導入されたもの。最長30メートルまで伸びるはしごをよじ登って先端まで行き、消火作業に当たっていた。昭和43年まで活躍し引退。名古屋市消防学校に保管されていたものを消防職員有志が「消防職員の魂」として廃棄することなく日々、磨くなどして保存してきた。
さて、ヨコイの提案によりベンツ社製機械式はしご車の修復が始まったのが平成29年。令和元年度末にはおよそ80%の進捗率を見込むが、私たちが想定していた以上に機械式はしご車の状態は悪く、また交換する部品もないためすべて修復は手作業。ベンツ社が修復はいったんは「無理」と判断したが、自動車整備士を養成する中日本自動車短期大学(岐阜県坂祝町)の教授、学生の皆さんが教材として修復をお受けいただき、3年にわたり修復作業を進めている。
しかし、「クラッチ板が摩耗し元の状態がわからない状態」など、当時の部品の調査や研究に相当な時間がかかることから、再び行動を走行するまでにはまだまだ時間がかかりそうだ。
いずれにしても、中日本自動車短期大学の教授、学生の皆さんはボランティアで日々取り組んでいただいている。名古屋市民の一人として頭が下がる思い。12月18日には中日本自動車短期大学に出向き、修復状況を視察するとともに、同大学に対し名古屋市として謝意を伝える。教授の先生方、学生の皆さんには今後ともよろしくお願いいたします。
■ 令和元年度末の進捗率見込みと残作業
(1) 制動装置 90%
・制動力のバランス確認及び調整
・制動能力の確認
(2) 動力伝達装置 60%
・ホイールとタイヤの組付け
・クラッチ製品の制作及び作動調整
(3) 電気装置 80%
・メーターパネル台座版修正に伴う配線の調整
(4) 原動機 70%
・キャブレター点検、分解整備
(5) その他の装置 80%
・メーターパネル台座版の修理
■ 今後期待される活用方法
・市民への防火防災啓発
・名古屋市消防の歴史や歩みなどに対する理解
・消防職員の魂の復元による士気の高揚など