提案理由説明

本会議開会日には、議長の開会宣言、議案の上程後、「市長提案理由説明」を必ずおこなうルールとなっている。補正予算等の概要やねらい・目的等を市長自身の手により議会に説明する。ただ、河村市長は「市長提案理由説明」において、補正予算に関係のない自らの「所信」をかなり時間を割いて述べることが多い。市長の思いや願いが浮き彫りとなることから、市長の考えを垣間見る大切な機会である一方、予算に関係のない話も多く、その在り方には課題が多い。

11月定例会の「市長提案理由説明」では、予算の説明より「市長の所信」が説明の大半を占めた。

■ 河村市長の所信の概要(11月定例会)
(1)  木造天守閣復元竣工が遅れることに対する謝罪
現天守閣の解体にかかる現状変更申請については、文化庁より石垣の調査・検討が不十分であるとの指摘をうけ、解体工事に着手できないため、2022年12月としていた竣工時期を延ばすこととした。市民の皆さまからの心配の声が届いており、申し訳ない。また、文化庁から復元まで一体が望ましいとの指摘の話もあった。

(2) あいちトリエンナーレ2019「表現の不自由展・その後」の展示への不満
「表現の不自由展・その後」の展示に至るまでの経緯や開幕後の展示中止・展示再開の経緯などに至る経緯がわからない。本市として「表現の不自由展・その後」の展示再開に反対し、この展示を支援しない。今年度支払い済みの負担金、約1億3,700万円及び、支払いを保留している残りの負担金、約3,300万円については、市の検証委員会を立ち上げ、その取扱いについて慎重に検討する。

(3) ロサンゼルス市の高等教育「キャリアパスウェイシステム」
ロサンゼルス市と姉妹友好都市提携から交流60周年を迎えた。この間、ロサンゼルス市はアメリカ西海岸No.1の商工都市として大いに発展し、ナゴヤもまた、日本の産業界を大きく牽引するものづくり産業の一大集積地となった。

5年振りにロサンゼルス市へ足を運び、ロスの高校のアメリカ的な授業を見学した。ロサンゼルス市の高校では、将来のキャリアのための教育、キャリアパスウェイ(Career Pathway)というシステムを設け、医療サービス・情報通信・農業・エンターテインメントなど15の分野から生徒が学びたいパスウェイを自ら選択し、各業種において必要な事柄を身につけられるようカリキュラムが構成されている。自分が好きな自分らしい人生を歩むためのエデュケーションを受けることで、子どもたちは、人生に絶望することなく、自らの将来を見据え、進んで取り組む。ナゴヤが求めている「エデュケーションの本質」を垣間見た。それをナゴヤが実現し、日本中に広めていく必要性を感じた。

■ 市長の所信を聞いて
「現天守閣解体が遅れたことに対する謝罪」の中で、「石垣の調査・検討が不十分との認識にいたった」とのことだが、この点については当初から私たちも再三指摘していたこと。今日まで市長並びに関係当局は一貫して「調査は十分」として私たちの意見を否定してきた。2年早く河村市長等がこの点に気づいていれば、もう少し違った展開になっていたかもしれない。

また、「文化庁から復元まで一体が望ましいとの指摘を受けた」との記述もあったが、この点も私たちが本会議等で再三指摘してきたこと。市長も関係局も議会の指摘に対し「一体でなくても問題ない」と否定してきたが、ようやく「一体でなければ進まない」との認識を持ったようだ。ただ、現状は「木造復元申請」に先んじて「解体申請」を単独で提出している状態であり、このままでは文化庁において検討すら行われない。しかるべき時期に「現状変更許可申請の終了届」を提出し、文化庁が求める「一体申請」が提出できるよう調査・検討を進めるべきだ。

さらに、この所信の中においてもまだ「石垣の保全」という重要な観点が欠落している。また、「現天守閣をなぜ解体しなければならないのか」に対する説明もない。未だ本市の認識は不十分。

オレスリリースあいちトリエンナーレ「表現の不自由展」については、公の施設における「慰安婦像」や「昭和天皇の肖像写真」の展示は認められないとする河村市長の「思い」を評価する市民は多い。私自身もこれら展示については「不愉快」でしかなく芸術であるとは理解できない。

しかし、過去の経緯を振り返ると河村市長の行動には疑問も残る。河村市長は過去4回実施された実行委員会(平成29年7月18日、平成29年10月20日、平成30年3月22日、平成31年3月27日)すべてを欠席している。もちろん、公務多忙であったこともわかるが、そうであれば、担当者から「実行委員会での議論の概要を教えてほしい。」などの対応もできたはずだ。少なくとも平成31年3月27日に実行委員会に配布されたプレスリリースには、表現の機会を奪われてしまった作品「慰安婦問題」「天皇と戦争」「憲法9条」「政権批判」等の記載もあり、「不自由展」が抱える問題について知りうる立場にありながらそれを怠った結果、問題が大きくなったことは否めない。いやむしろ、実行委員会副会長として自身の責任もあるはずだ。
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横井利明
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