所有者不明土地の問題と解決について

現在の名古屋のまちの基礎は、約400年前の名古屋城築城と城下町の建設にさかのぼる。その後、第2次世界大戦の戦災により市域の約4分の1を焼失したが、名古屋市はいち早く戦災復興計画を立案し、100メートル道路の敷設や市内の墓地を平和公園に集団移転するなどの大胆な都市計画を実行した。また、伊勢湾台風などの災害を教訓としたまちづくりも進められ、現在の活気に満ちた名古屋のまちが作られてきた。

しかし今、日本は、少子化・高齢化に伴う人口構造の変化に直面している。日本全体でみた人口はすでに減少に転じているが、名古屋市においても令和5年頃から人口減少に転じると推計されている 。

また、価値観やライフスタイルが多様化する中で、家族や世帯のあり方や人と人とのつながりも変化している。現在、名古屋市では65 歳以上の高齢単身世帯は約12万世帯もあり 、この数は今後さらに増加していく。こうして使わない土地が増え、さらには相続の機会も増え、それが繰り返されることにより所有者が誰か分からなくなるという状況は、ますます増加すると思われる。

名古屋市内の所有者不明土地の正確な筆数については、市当局においても把握できていないが、所有者が不明で固定資産税・都市計画税が課税できていない土地は、平成30年度決算で、筆数89、面積11,115㎡、税額として369万6千円存在している。

所有者が不明で固定資産税・都市計画税が課税できていない土地が意外に少ないと感じられるが、名古屋市の固定資産税の徴収率は30年度決算で99.8%と政令指定都市の中で断トツの第1位となっており、公平な税制度にむけ、名古屋市がかなり厳しく所有者を補足していることがわかる。

一方、神社・仏閣・広場など非課税土地の中にも所有者不明土地が、また土地の課税標準額の合計額が30万円未満の免税点未満の土地の中にも所有者不明土地がある可能性がある。

なお、市の固定資産税評価筆数と国交省調査の割合を参考に単純計算により推計すると、所有者が不明な土地は市内に3,000筆程度あるのではないかと想定される。

名古屋市の場合、実際に公共事業を進める中で、所有者不明土地の存在により事業に明らかな支障を及ぼしたという事例はないものの、土地の所有者がすぐには判明せず、所有者探索に手間がかかることはある。

例えば、市内のある場所で道路整備事業を進めるなか、複数人の共有地の買収を行うことになり、そのうちお一人の行方がつかめない状況に至った。このときは不在者財産管理人制度を活用し、現在はすでに用地は確保され道路も整備済みとなっているが、こうした案件が今後増えてこれば、名古屋市においても公共事業への影響が表面化するのではと心配される。

こうして、不在者財産管理人制度を活用し、現在はすでに用地は確保され道路も整備済みとなっているものの、こうした案件が今後増えると、名古屋市においても公共事業への影響が表面化するのではと心配される。

このたび国交省・法務省をはじめとした関係の皆さまのご尽力により「所有者不明土地法」が全面施行され、こうした課題の解決につながる様々なメニューが創設された。

名古屋では、名古屋駅・栄・金山など都心部をはじめとし、土地価格は上昇を続けており 、地方の市町村とのいわゆる二極化が進んでいる。地方では土地の価値が下がり、「親の土地は要らない、相続したくない」という状況が顕著になっている。少子・高齢化がさらに進めば、この波はいずれ名古屋市にも押し迫ってくる。

また、現代社会では人と人とのつながりも希薄化しており、地域のコミュニティ機能が低下している。昔は地域に長老のような方がいて、「この人に聞けば分かる」という関係性があったが、今ではこうした関係性も少なくなっている。このことも、所有者不明土地を増加させる原因ではないかと考えている。全く別の観点にはなるが、地域コミュニティの再評価・再構築というのも、所有者不明土地の発生を防ぐのに大事な役割を果たすのではと考える。

いずれにせよ、所有者不明土地の問題は1つの特効薬で解決するといった類のものではなく、色々な解決策を複合的に取り入れていく必要がある。
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横井利明
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