令和2年度予算(5) 保育士確保こそ最大の待機児童対策
令和2年度予算(5) 保育士確保こそ最大の待機児童対策
子どもたちの成長を支援する保育士の仕事は本当に魅力的。だからこそ、夢をもって保育士を目指す学生は本当に多い。
しかし、現実はなかなか大変だ。保育園の開設日は月曜から土曜日まで。また、開園時間は通常1日12時間。お盆休みもない。事務仕事も山ほど。年案、月案、週案、日案の作成、保育室の環境整備や保育教材の作成、児童要録の記入など各種の書類の作成、保護者の対応や学年内の調整、職員会議や学年会議、行事の準備…
子どもがけがをすれば保護者への説明に追わる。保護者からのクレーム対応で疲弊する保育士も少なくない。自宅への仕事の持ち帰りも日常的。それでいて、保育士の給料は決して高くはない。その結果、保育士養成校を卒業しても20%の学生は、一般企業への就職を希望する。
さて、現在、名古屋市における保育士の有効求人倍率は5倍といわれている。5つの保育園が保育士を希望しても1人の保育士しか応募しない。
そのような現状にもかかわらず、名古屋市は新設保育園の設置をどんどん許可している。しかし、保育士の絶対数が不足しているため、既存園の保育士確保はさらに困難に。もちろん、新設園の多くも保育士確保に困窮し、開園すらままならない保育園も少なくない。仮に保育園の定員が100人あっても、保育士確保ができなければ、子どもを80人しか預かることができないといった事態も想定されるし現状そういった状況となっている。
さらに、保育士不足は保育園の経営にも大きな影響を与えている。保育士紹介料の高騰もその一例。現在の保育士紹介の相場はひとりあたり100万円~120万円。保育士確保の必要から多額の紹介料の支払いを強いられ、保育園の経営を圧迫しているのが実態だ。
そこで、こうした実態を踏まえ待機児童対策が確実に進むよう、令和2年度予算に向け、さまざまな制度改正について提案してきた。令和2年度予算で実現したことをまとめてみた。
■ 令和2年度予算のおける新たな保育士確保対策
〇 保育士等の技能・経験に応じた処遇改善(11億円)
保育士の資格を有する大学を卒業しても、約20%の学生は保育職につかず一般企業に就職する背景には、一般企業に就職したほうが保育士よりも平均で80万円所得が高いことがある。そこで、保育士の処遇を改善するため、保育所等に対して給付される「子どものための教育・保育給付等」(公定価格)に基づく「技能・経験を積んだ職員にかかる追加的な人件費の加算」を令和2年度予算で実施する。
・副主任保育士等 月額4万円
・職務分野別リーダー等 月額5,000円
〇 保育士基準の弾力化
保育士の不足により定員まで受け入れられない保育所等が発生していることから、保育士不足の間の臨時的な措置として、朝夕等の児童が少数となる時間帯における保育士配置基準の弾力化を実施する。ただし、保育補助者の要件については、「有資格者と同等の知識及び経験を有する保育補助者」に限定して認める。
〇 民間保育所等における保育支援者の配置(3億6,180万円)
保育士確保支援策として、保育にかかる周辺業務を行う保育士園舎を配置する民間保育所等に対し、その費用の一部を補助することにより保育士が働きやすい環境を整備し、民間保育所における保育士確保の推進を図る。
〇 保育園におけるおむつ処分(公立保育園1億2,900万円、民間保育園1億1,000万円)
公立保育園、民間保育園において発生する使用済み紙おむつを各保育園で処分することにより、保護者や保育士の負担軽減を図る。