「1人5万円還元」の公約を掲げて初当選した中根康浩岡崎市長が11月6日、市民への一律給付を断念する意向を固めたとの報道があった。「市議会で否決されるならこのまま進めても年内給付は難しい。やむを得ない選択だ」と説明したという。
情けない。
議会が否決するから撤回したというのはあくまでも中根市長の言い訳。議会への責任転嫁に過ぎない。結局は「1人5万円還元」を実施するだけの財源を基金以外に示すことができず、公約撤回に至ったというのが真実だろう。
「1人5万円還元」といったシングルイシューでこの市長選挙を戦った以上、当選後わずか半月で公約を撤回するのであれば、その責任をいかにしてとるのかを明らかにすべきだ。
その意味では、河村市長は「市民税5%減税」など、財源的にはでたらめでも最後までやり切ろうとするだけ立派。アベノミクス等で市税収入が年間1,000億円以上増えた(市民税減税の財源は法人・個人合わせて120億円)という幸運はあるものの、「一丁目一番地」の実現に対する執念は並々ならぬものがあった。
■ 1人5万円還元は本当に無理なのか
「1人5万円還元」政策の是非は別の議論として、この政策の実現は本当に無理なのだろうか。この問いに対するヒントは、「1人5万円還元」の財源を基金ではなく、行財政改革など新たな財源に求めることができるのかどうかだろう。
「1人5万円還元」の財源である192億円をいったんは基金に求めるとしても、市長任期の4年間の行財政改革で192億円を生み出すことができれば、市民の理解は進むだろうし、議会も否決しにくい。例えば、岡崎市のすべての事業について、民間移管を基本に、事務事業の洗い出しを行う。広告料収入など、多様な財源確保・財源の涵養を進める。規制緩和が財源につながることから、規制改革を積極的に進め、新規産業の意創出と共に新たな財源確保に結びつけることができるかどうか。電子自治体の推進による行政の簡素化や、広域行政・自治体連携による効率的・効果的連携施策の推進など。
そういった議論も全くなく、「1人5万円還元」だけを撤回するというのは正直情けない。