「あなたの会社はクラスターなんだからで歩かないで」
職場の同僚が新型コロナウイルス感染症に感染したことで、Aさんは同じマンションに住む住民からマンション内を出歩くことを批判された。Aさんはコロナに感染した同僚と部署が違うため濃厚接触者ではないにもかかわらず、あたかもコロナに感染しているかのような批判に大変傷ついた。
Aさんの会社では同僚ひとりの感染が確認されただけで、職場同僚に対するPCR検査の結果、他への感染の拡大がないことがわかっている。ましてやクラスター(集団感染)になっているという事実はなく、いわれのない風評被害に苦しんでいる。
Aさんは私に胸の内を打ち明けるとほっとしたように「もう大丈夫。でも近所の方からこんなバッシングを受けてショックを受けた。」とつぶやいた。
確かに、新型コロナのような「未知」のウイルスへの不安から、感染者を異質なものとして排除しようとする心理が働きやすい状況になっているのはわからないわけではない。しかし、行き過ぎたバッシングは、不幸にして感染した方々、また、その家族や同僚を苦しめるだけであり、何ら問題の解決にはつながらない。
山手線の車内で、せきをしたことをきっかけに男女3人がケンカになったことがかつて報道されたが、他人を見る目が厳しくなっていく中、せきやくしゃみで大人たちが我を失ってしまう過敏な世の中になっていることを心から憂う。