ひとり暮らし高齢者の孤立死の死後事務が大きな社会問題となる中、8月末の1週間の間に、南区の某学区某町内会で、孤立死が相次いだことで、地域住民に徒労感や疲弊感が漂った。
もともとこの学区では、ひとり暮らし高齢者を対象とした「ふれあい喫茶事業」や、民生児童委員が中心となり学区あげて実施していた「ひとり暮らし高齢者給食会事業」、民生委員さんや町内会が中心となって実施していた「地域見守り活動」、「いきいき支援センター(地域包括支援センター)の見守り支援員による「見守り訪問・電話活動」などが継続して重層的におこなわれていた。Aさんも近所の民生委員さんから誘われ、「ひとり暮らし高齢者給食会事業」などに頻繁に参加していたが、新型コロナウイルス感染症の拡大により今年度の事業は自粛されていたさなかの孤立死だっただけに、関係者の間には徒労感が漂う。
さて、孤立死後の悪臭やはえなどの防疫への対応、遺品整理の滞りなどの問題が南区で頻繁に繰り返し起こっている。しかし、その多くはご遺族がなかったり、ご家族と連絡が取れなかったりすることで死後事務が滞る場合が多い。
Aさんの場合、奥様は重度の認知症で施設に入所中。また、Aさんのお子さんは重い障害を持っており、Aさんの遺品整理をおこなうのは困難だと想定された。今回、南区保健センター長が悪臭のもととなっていた布団やカーペットの処理、はえの駆除を英断した背景には、ご遺族だけでは対応が困難だと判断したことがあるだろう。
少子高齢化の中、今後このような事例が市内各地で相次ぐ可能性があり、故人の生前の意思を実現して死後事務の処理が円滑に行えるようにするために、「死後事務委任契約」は実務上有用な手段だと考えられる。これは委任者と受任者の生前の契約によって委任者の死後の様々な事務処理を実施する手段となっている。
■ 福岡市社会福祉協議会就活サポートセンター「やすらかパック事業」
「自分が死亡した後のことが心配」という方との生前の契約により、死後事務(直葬、納骨、家財処分、役所の手続き等)を行う事業。
福岡市社会福祉協議会と、
(1) 死後事務委任契約を結び利用料を支払っていただくことで、
(2) 保険の仕組みを利用し、
(3) 福岡市社会福祉協議会が委託した業者が死後事務を実施する。
本市では、孤立死後の遺品整理など死後事務が滞り、いつまでも遺品がアパート内に残されたり、悪臭の源となるような事例が後を絶たないことから、名古屋市においてもひとり暮らしの方や身寄りのないご高齢の方々の、万が一を支えるサービスにより、日常的な見守りから入院時の対応、亡くなった後の手続きなど、老後の不安を「安心」に変える仕組みが必要となりそうだ。