1914年(大正3年)9月に鍋屋上野浄水場から給水を開始したなごやの水道は、今年で給水開始109年を迎える。当時は木曽川に自然に流れる水だけでまかなわれていたが、これでは発展する名古屋の水需要をまかないきれなかったため、岩屋ダム(1976年竣工)や木曽川大堰(1977年竣工)などからなる木曽川総合用水や、味噌川ダム(1996年竣工)によって水利権を確保してきた。
さらに、少雨化などにより、ダムなどの水源施設の能力が計画した当時にくらべ低下していることや、河川の水質汚染事故などのリスクも高まっていることから、長良川河口堰(長良川水系1994年竣工)、徳山ダム(揖斐川水系2008年竣工)にも水源を確保し、水源の多系統化による安定した給水を目指している。
■ 名古屋市の水利権の給水可能量
木曽川 160万6,000㎥/日
長良川 16万1,000㎥/日
揖斐川 8万㎥/日
合計 184万7,000㎥/日
一方で名古屋市の水道の給水実績は年々減少している。
■ 給水実績(令和3年度名古屋市)
一日最大給水量 79万7,000㎥/日
年間給水量 2億7,400万2,000㎥/日
■ 給水量減少の原因
・節水意識の定着
・トイレや食器洗い機、洗濯機といった節水型機器の普及
・一部の大口使用者(企業など)が水源として地下水などを使用
今後、人口減少社会の到来等を控え、さらに給水量が減少することが想定される中、「水あまり」の声も聞かれる。一方で、平成6年相当の渇水が生じた場合には、給水可能量が89万4,000㎥/日まで減少すると見込まれていることから、名古屋市水道局は「渇水時にも安定した給水サービスを確保できるよう、他系統の河川から取水することが必要」として、市民への理解を求めている。
愛知県技師上田敏郎氏が「将来の名古屋市の発展を支えるためには、安定した水を確保することが可能な木曽川を水源とする上水道敷設を実施することが最善」として、明治36年、名古屋市会に諮問したことから、名古屋市の水道事業が始まった。先人たちの先見性と努力が、名古屋の豊かで安定した水道の提供につながっていることはまちがいない。