混迷を続けるイギリス政治、ポピュリズムのBrexitがもたらしたもの

イギリスでは、トラス首相が、就任から45日で辞意を表明した。 この6年で4人もの首相が辞任するという事態は、議院内閣制の祖国であるイギリスにしては異常事態である。4人の在任期間は、デーヴィッド・キャメロンが2010年5月11日〜2016年7月13日、テリーザ・メイが2016年7月13日〜2019年7月24日、ボリス・ジョンソンが2019年7月24日〜2022年9月6日、リズ・トラスが2022年9月6日〜である。 この4人は、皆オックスフォード大学の出身である。しかし、高学歴、名門大学出身であっても、ポピュリズムに抗することはできなかった。 保守党党首選では、ウクライナ戦争の長期化に伴う物価高への対応策として、トラスは大型減税を掲げた。450億ポンド(7.6兆円)という規模である。この減税によって経済成長が実現し、それが賃上げにもつながり、インフレを克服するという目論見である。 しかし、財源はどうするのかという疑問が当然に出てくる。イギリスは構造的な財政赤字に悩んでおり、財政再建への明確な道をトラスは示すことができなかった。 このような経済政策に対して、金融市場が否定的な反応を示し、ポンドはドルに対して急落し、英国債の利回りは急上昇したのである。また、IMFやバイデン米大統領も、トラスの政策を厳しく批判した。 そこで、トラスは、法人税を引き下げる、所得税の基本税率を20%から19%に引き下げる、所得税の最高税率を45%から40%に引き下げる、配当税率を引き下げる、イギリスを訪れる旅行者に付加価値税(VAT)を免除するなどの減税策を次々と撤回していったのである。クワーティング財務大臣も更迭した。 続きをみる

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