ブラジルでは、10月30日に大統領選挙の決選投票が行われ、元大統領のルイス・イナシオ・ルラ・ダシルバ(2003〜2010年、2期8年間在任)が現職のジャイル・ボルソナロ(2019年〜)に競り勝った。 ルラは労働組合の指導者として頭角を現し、1980年に労働者党を創設し、下院議員を経て、大統領になっている。左派で貧困層への支援に力を注いだが、それはブラジルが誇る天然資源の価格上昇によって、高い経済成長を実現し、潤沢な税収を確保できたからである。 ボルソナロは「ブラジルのトランプ」と言われる軍人出身の右翼政治家で、国営企業の民営化などを推進してきた。新型コロナウイルスを「ただの風邪だ」と言ってのけ、感染拡大で大きな被害を出している。 ルラの勝因は、経済問題にある。コロナ感染、ウクライナ戦争などによって経済格差は拡大し、十分な栄養すら摂取できない貧困層が拡大した。この点を強調して、最低賃金の引き上げなどの低所得者対策をアピールしたルラに軍配が上がったのである。ボルソナロも、貧困層向けの現金給付などの対抗策を打ち出したが、僅かに及ばなかった。 ブラジルの大統領選で左派が勝利したことで、中南米ではGDP上位6カ国全てが左派政権となり、2000年代の「ピンクの潮流」の再来と言われている。 1998年12月のベネズエラ大統領選で反米左派のチャベスが当選し、その後、11カ国で左派政権が生まれるという事態になった。ただ、左続きをみる『著作権保護のため、記事の一部のみ表示されております。』