感染症の危機管理:新型インフルエンザ対応の教訓(12)水際作戦から国内の医療現場作戦へ

 2009年、新型インフルエンザが猛威を振るっているときでも、霞が関は省庁の縄張り争いが激しく、危機管理に支障を来す状況であった。 そこで、厚労相の私は、自らに権限を集中させるために、政府全体で新たに基本的対処方針を決めた。5月22日のことである。 その方針の第三の措置として、「医療の確保についての運用方針は、厚生労働大臣が別途定める」としたが、これは厚生労働大臣の本来業務であるので当然である。 第四が、抗インフルエンザ薬、マスクなどの供給確保。 第五が、電気・ガス・水道、食料品などの確保、保育の確保などの国民生活維持。 第六が、パンデミックワクチンの開発・製造。 第七が、水際対策の見直し。 第八が買い占め防止や治安対策である。 こうして、具体策を「医療の確保、検疫、学校・保育施設等の臨時休業の要請等に関する運用指針」に落とし込むことにして、役所の縄張り争いに邪魔されることなく、厚生労働大臣がリーダーシップを発揮できる態勢にしたのである。 この運用指針では、地域を(1)感染の初期、患者発生が少数であり、感染拡大防止に努めるべき地域と(2)急速な患者数の増加が見られ、重症化の防止に重点を置くべき地域とに分けて対応をすることにした。 要するに、これまでの経験から、新型インフルエンザが季節性インフルエンザと症状が似ていること続きをみる

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