金融庁報告書撤回:老後2000万円の不足は解消したのか? 

 9月19日、金融庁は、6月3日に金融審議会の市場ワーキンググループが出した「高齢社会における資産形成・管理」という報告書、いわゆる「老後2000万円不足」報告書を議題にしないと決めた。 25日に金融審議会の総会が開かれるが、議論をしないというのだから、事実上の撤回で、「たなざらし状態」になる。嘘を書いた報告書ではないのであって、この対応は酷い。 この報告書は、長寿化に伴う様々な問題点を指摘し、高齢化社会における資産形成や管理について有益な提言をしている。認知症の増加についても取り上げるなど、個人にとっても金融機関にとっても役に立つ情報が満載である。 この報告書は、5月22日の金融審議会で取りまとめられたが、それを報道した、例えば23日の朝日新聞の記事は、「人生100年 蓄えは万全? 『資産寿命』国が世代別に指針」というタイトルである。報告書の内容を紹介した本文には、年金だけだと月に約5万円の赤字になるという指摘もきちんと書かれている。「国民の自助努力を促している」と記してはいるが、大騒ぎをするような論調ではなかった。 ところが、野党は、政府を攻撃する材料にこれを取り上げ、大騒ぎを始めたのである。その野党の動きに乗じる形で、6月7日から新聞やテレビもセンセーショナルに「老後に2000万円不足」と伝え始めた。12年前、自民党の参院選惨敗を受けて、私は厚労大臣に就任し、年金記録問題の解決に全力をあ続きをみる

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