ケアプラン有料化でケアマネジメントの質は上がる?

居宅介護支援事業所の介護支援専門員(ケアマネジャー)は利用者の介護サービス計画(ケアプラン)を作成し、サービス利用を調整、一カ月のサービス利用実績などを報告する給付管理業務を行います。

この一連のケアマネジメント業務に関して、介護保険制度上、利用者の自己負担が発生することはありません。

 

介護支援専門員は公正中立な立場からケアマネジメント業務を行うことから、利用者に自己負担を設定せず、その報酬は全額介護保険の中から介護報酬として居宅介護支援事業所に支払われます。

 

しかし、この居宅介護支援事業所によるケアプランを有料化するという声が介護報酬改定のたびに上がっています。

自己負担が発生することでケアマネジメントの質が向上するという意見から、制度改定のたびに論点として俎上に挙がっているこの問題。

昨年末の財政諮問会議にも項目として挙がっていました。

果たして本当に自己負担が発生することでサービスの質は向上するのでしょうか。

 

利用者が介護サービス計画や介護支援専門員を見る目が厳しくなり、介護支援専門員が責任をもってサービス計画を作成するようになるという意見です。

この時点で介護支援専門員が無責任に業務を行っているという、やや一方的な見方を感じとることができます。

では、医療や介護のサービス利用に自己負担がもともと発生しない生活保護の利用者は自己負担のある利用者に比べて質の低いサービスを受けているのでしょうか。

自己負担割合の高い利用者はそうでない利用者に比べて質の高いサービスを受けているのでしょうか。

利用者の自己負担が発生するから質が向上するという主張にはさすがに無理があります。

 

また、ケアマネジャーの行っている業務はケアプランの作成など直接利用者の支援に関する業務だけではありません。

給付管理という業務では、利用者の利用したサービスの内容と事業所が請求する内容と照らし合わせて不正がないか確認し、介護保険制度上のチェック機能を担っています。

地域の課題を解決するための地域ケア会議への出席も義務付けられていますが、これも直接的な利用者の支援業務ではありません。

こういった公的な部分の役割を担っているケアマネジャーの業務が、サービス事業所の行う業務と同じ視点で同様に自己負担を求められるのは間違っています。

 

近年、介護支援専門員試験の合格者は極端に減少しています。

さらにこの制度を支えてきた制度開始当初からのベテラン介護支援専門員をはじめ、多くの介護支援専門員が今後現場を離れることが予想されます。

今後の高齢者人口の増加という需要に対応しきれなくなるでしょう。

競争させることで質を向上させ、質の悪い事業所を淘汰していくとしても、このままでは需要が供給量を大きく上回り、利用者は居宅介護支援事業所を選ぶことができず、質の向上には結局つながりません。

 

介護保険財政がひっ迫している理由から批判の多い居宅介護支援事業所から自己負担をとるようにするという短絡的な制度改正は、ケアマネジャーとサービス利用者の負担だけを増やすだけの結果にしかつながらないでしょう。

ケアマネジメントへの利用者負担導入ありきではなく、いったん白紙にしたうえで制度全体を広い観点から再検討していくべきではないでしょうか。

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山口和之
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