2027年のリニア中央新幹線の開業に向けた「迷駅(名駅)」からの脱却、駅の利便性向上の目玉のひとつが「名鉄名古屋駅の4線化」だ。
現在、名鉄名古屋駅は、線路は上下それぞれ1本のみ。ホームは対向式が2面、その真ん中に降車・特別車両乗降用の島式が1面の計3面で構成されている。一方、名鉄名古屋駅の1日当たりの乗降客数は30万人。発着する列車本数は平日で920本、休日には925本、1時間当たり最大片道28本にものぼることから、乗降時間も含めて2分に1本の列車本数となっている。
また、一つのホームで、豊橋、常滑、河和など、さまざまな方面の列車を捌いており、混雑しているうえにわかりにくいという難点をかかえている。
そこで、名古屋鉄道は、2027年に予定されているリニア中央新幹線の開業にあわせ、名鉄名古屋駅地区再開発の中で、現在の3面2線の手狭なホームを改善し、名鉄名古屋駅の四線化を進めるとともに、中部国際空港行き専用ホームの設置を検討することを本年3月に正式に発表した。4線化などの対策で、名鉄名古屋駅が抱える課題の解消を目指したものだ。
しかし、「名鉄名古屋駅の4線化」に向けた大きな「壁」が見えてきた。
名古屋鉄道の試算では「名鉄名古屋駅の4線化」にかかる事業費は1,100億円にものぼるという。一方、4線化にむけた国の補助制度、自治体の補助制度は存在せず、このままでは全額を名古屋鉄道が負担しなければならない可能性が出てきている。さらに、名鉄ビルの再開発にも別途、2,200億円の事業費(再開発には国・自治体の補助制度あり)が見込まれ、本当に名古屋鉄道一社の体力でこの事業が実現できるかどうかの判断に迫られている。
仮に、「名鉄名古屋駅の4線化」が遅れることがあれば、名古屋市が進めるターミナル構想自体も2027年のリニア開業に間に合わない可能性も指摘されており、愛知県、名古屋市は「名鉄名古屋駅の4線化」事業にどのようにかかわることができるのか、早急に検討する必要に迫られている。
■ 名古屋駅ターミナルスクエア構想
2027年のリニア開業を含め5社10路線が乗り入れる名古屋駅が、地上・地下の動線が複雑に入り組んでおり、乗り換えが非常にわかりづらくなっていることから、乗り換えの利便性の大幅な向上を目指した名古屋駅始まって以来の大規模な改造計画である「ターミナルスクエア構想」を名古屋市が公表。各路線同士のスムーズな乗り換えを想定したターミナルスクエア(乗り換え空間)の整備により、歩行者動線や案内サインを改良することで、初めて名古屋駅を訪れる人や、外国人にもわかりやすい「国際レベル」のターミナル駅の整備を目指している。なお、名古屋市はターミナルスクエアの整備費として700億円を予定する。