「年収にして80万円の開きが生じている」
服部しんのすけ議員(自民:熱田区)が取り上げた保育士の給料が他業種に比して安いのではとの問いに、杉野みどり子ども青少年局長は、「愛知県における全産業賃金水準と本市の民間保育所保育士の賃金水準を比較した場合、同程度の勤続年数で年収にして80万円の開きが生じている。」と答弁した。
保育園の開設日は法令により月曜日から土曜日と定められている。また、民間企業のようにお盆休み等もない。さらに保育園の開設時間は多くの施設では12時間。ローテーションを組んで勤務しているものの、民間企業に比して労働日数は多く、労働時間も長い。保護者等からの苦情も決して少なくはなく、一方で子どもの「命」や「育ち」を守るといった極めて重要な仕事であることから、日々神経をすり減らしながら働いているのが実態だ。
それでも、「子どもが好きだから」「子どもの笑顔で幸せになる」「子どもの成長を間近で見られるのは感動する」など、保育士の情熱と子どもたちへのあふれんばかりの愛情によって支えられてきたのがまさに保育士という仕事だ。
しかし、近年の労働力不足から、保育士養成大学を卒業しても保育士にはならず一般企業で働く学生が増加している。市の調査によると、約20%の学生が保育士以外の職種に就職している。また、保育園で就労していても、給料の高い一般企業への人材の流出が止まらないのが実情だ。
いくら保育園の整備を進めても、保育士が確保できなければ乳幼児をお預かりすることはできず、必然的に待機児童は解消しない。現在、市内の保育園でも、保育士が充足せず、定員の枠はあるものの、子どもをお預かりできないといった事例が全市的に当たり前の状況になっている。
一方、国においても、他業種とくらべて平均賃金が低いため、人材不足になりがちな保育士への処遇改善が欠かせないとして、処遇改善策を講じている。しかし、これら処遇改善が本市では適応されなかったり、保育士の給料に反映されなかったりしているのが実態であり、制度への改善要求が現場から相次いでいた。
6月19日に行われた本会議で、この問題を問われた子ども青少年局長は、「本市独自の民間社会福祉施設運営費補給金制度を維持しつつ、保育士確保の観点から、保育士の更なる処遇改善について検討したい。」と前向きな回答。全産業賃金水準より80万円安い保育士の給料問題。国の制度を活用しつつ、どこまで格差を埋めることができるのか、子ども青少年局や議会の取り組みが試されている。