子どもの頃、真夏の暑い夜「お腹だけは冷やさないようにしなさい」と、母からよく言われたもの。今になってみると、極めて合理的で科学的な親のアドバイスだったとよく理解できる。
6月4日は、30℃をこえる暑さだったため、冷たい水や麦茶、アイスコーヒー、ジュースなど、食事もあまりとらず1日、冷たい飲み物を飲んでいた。当然のことながら冷え腹をおこし、嘔吐、下痢、悪寒、そして極度の腹痛に。この時点で、自らおかれた境遇は十分理解できたもののすでに時遅し。湯たんぽをおなかに抱え、真冬の布団をかぶって痛みをこらえた。
さて、食べたものは胃や腸で消化する。例えば、デンプンを分解する消化酵素は、唾液などに含まれるアミラーゼ。アミラーゼは、デンプンを細かく分解しデキストリンという物質に変えていく。そのデキストリンが小腸に来ると、マルターゼという消化酵素が働き、加水分解され、グルコースとなって小腸に吸収される。
これら唾液、胃や十二指腸、小腸から分泌される消化酵素が最も活発に働く温度が体内温度である37℃に設計されている。急激に冷たい飲み物を大量の飲むと、一気に胃腸が冷やされ、消化酵素の働きが悪くなり、消化不良を引き起こす。また、冷たい飲み物は、胃腸内のお腹の血管を収縮させ血流を阻害。これもまた、消化不良の原因となってしまう。
暑い時期の冷たい飲み物は、確かにおいしく、清涼を与えるものの、その後の腹痛や嘔吐、下痢などを考えると、冷たいビールなど飲み過ぎには注意すべき。
昔の日との言い伝えは日常生活と科学が融合し、日頃の生活に活かされていたとあらためて感服する。皆様も、暑い日の冷たい飲み物には十分お気をつけください(反省)。