5世紀末頃に築造されたとされる「桜神明社古墳(南区呼続町 円墳)」の名古屋市文化財の指定に向けた調査が行われている。
「桜神明社古墳」は何らかの理由で昭和47年以降、市の文化財から外されている。墳頂に桜神明社が祀られているものの、古墳の保存状況は比較的良好であり、また、桜神明社古墳の周辺には他にも鳥栖神明社古墳(南区)、鳥栖八剱社古墳(南区)などの古墳が残されていることから、古墳時代当時の周辺の状況を知るうえでもとても貴重な古墳だ。
さて、「桜神明社古墳」は名鉄名古屋本線連続立体交差化事業により、存続の危機を迎えていた。古墳が仮線予定地の区域に入っていたことから、古墳は一部造成され道路となる予定だった。しかし、桜神明社の氏子の皆様からのご要望があり、横井利明から市住宅都市局等に働き掛けた結果、一部区間で大幅な工法変更となるものの、一転して損壊を免れた経緯がある。
さて、桜神明社古墳の市文化財の指定にあたり、地表面の観察に加えて、遺跡の有無や遺構の分布状況を迅速かつ安価に把握して、発掘調査や遺跡の性質を判断したり、地面の下の様子を調べたりするために、トレンチ(Trench 試掘坑)という幅1m前後の溝を掘っている。
その過程でさまざまな遺構が見つかっている。
■ 葺石(ふきいし)
古墳の墳丘の表面を葺いている石。墳丘の斜面だけに用い、平坦(へいたん)面には使わない場合が多く、盛土の流失を防ぐ施設と考えられる。桜神明社古墳では古墳の斜面全体を覆っていたのではなく、斜面の外周を帯状に葺いていたものと考えられている。一部の葺石は、斜面から平坦な部分に滑り落ちているがほぼ原形をとどめていた。
■ 須恵器
古墳時代中期(5世紀)以降、朝鮮半島から製作技術が伝わり日本で生産された陶質土器(炻器)。青灰色で硬い。桜神明社古墳からも出土した。
■ 蓋形埴輪(きぬがさがたはにわ)
蓋形埴輪と呼ばれるものの破片も出土した。「蓋(きぬがさ)」は「地位の高い人にさしかける傘」のこと。
6月初めにはトレンチはすべて埋め戻された。今後、1年ほどかけ、市文化財の指定に向け試掘調査の結果を取りまとめる予定だ。