市長公約30%キャッシュバックの課題や問題点を洗い出してみた

今年4月の名古屋市長選挙で当選した河村市長が目玉公約として掲げたのが、「キャッシュレス決済で3割、ひとり年間最大2万円分のポイント還元」。4年間、50億円ずつを一般財源でまかなうとしていた。

しかし、当初想定していた「PayPay」のようなQRコード決済を使う仕組みでは、名古屋市民以外の誰でも30%ポイント還元を受けることができることから導入を断念。代替策として「スマートフォンを活用した電子商品券へのポイント付与」と「紙のプレミアム商品券の発行」を併用した消費喚起策を実施する。

■ 河村たかし公約(河村たかしHPより)
商品券より買物還元総額200億円
・経済効果860億円消費拡大。買物金額の30%(消費税10%相当を超える3倍)をキャッシュバック。電子マネーを利用。ひとり2万円上限。利用総額200億円還元でキャッシュレスが普及し非接触コロナ感染防止も一気に促進する。商品券2万円より経済効果、利便性大。経済効果は860億円。商品券と違い飲食だけでなく、衣料品、食料品など生活必需品も利用可能。お年寄りにも使いやすく。丁寧に説明、お年寄りもすぐに慣れる。スマホ普及率も急上昇する。浜松市等で実証済。敬老パス(マナカ)との連携等を目指す。スマホ普及率、キャッシュレス普及率Nо.1ナゴヤになる。スマホで市役所も加速し、アフターコロナ最先端都市ナゴヤへ。

■ 公約との相違点
1. 令和3年度から令和6年度までの4年間、毎年50億円ずつ実施するとしていたが、令和4年度の1年間だけしか発行しない予算(債務負担行為)になっている。
2. 公約であれだけ批判していた「紙の商品券の発行」を総額の半分、発行することになったがその説明はない。
3. マナカとの連携はない。
4. 経済効果860億円はあまりにも過大。860億円の根拠も示されていない。
5. スマホで市役所加速の意味が解らない。ちなみに河村市長の独断でマイナンバー関連施策を凍結しているため、名古屋市はこの12年間でDXが日本で最も遅れた自治体に転落している。

■ 問題点
1. 200万人以上の市民に恩恵なし
キャッシュバック分50億円をひとり21,000円(3,000円×7冊)で割り戻すと23万8,000人分。名古屋市の人口は233万人(令和3年10月1日現在)であり、約10人に1人しか恩恵を受けることはできない。90%の市民、いわば200万人以上の市民はそもそも対象ではない。税を65億円も投入した事業が等しく市民にいきわたらなず公平な事業とはなっていないのは問題。

2. 生活困窮者には手が出ない可能性も
電子商品券も紙のプレミアム商品券も最大21,000円のプレミアム分を受けようとすれば、当初の手元資金が70,000円必要となる。生活困窮の方々の中には70,000円を先銭で支払うことができない方もあり、一定程度、手元資金のある方だけが恩恵を受けることになる。本当に困っている方のところにお金が回らない。

3. 事務費15億円は電子マネー事業者のいい値
購入者を市民限定にするために、ペイペイ等の既存システムを活用できず、50億円分のプレミアムを配るのに16億円もの事務費がかかる。電子マネー事業者のいい値で請求され事業者が儲かるだけ。また、これだけ税金を投入してステムを構築しても使うのは1回だけ。たった1回の事業に事務費15億円分もかけるなら、困窮している学生の支援など他の効果的なコロナ対策もできた可能性がある。また、仮に今後4年間やるとして、毎年のように事業者が変わると、前年度にかけた事務費が無駄になり、毎年度、一から事業を構築するのと一緒の経費がかかる。

4. 事業実施時期が遅すぎ。コロナの渦中に1年遅れの事業実施は致命的
ポイント還元を令和3年秋には実施するとしていたが、実施令和4年6月下旬から令和5年1月末。困っている方に困っているときに適切的確迅速に支援しなければ、巨額の税投入が活かせない。あまりにも事業実施が遅く、コロナで困窮する市民の方々の支援にならない時点で、この事業は致命的な欠陥を負っている。

5. 財源が全く示されていない
令和3年度は100億円財源が不足すると9月定例会で公表されたばかり。この施策でさらに65億円が不足することになるが、何ら財源が示されていないのは無責任。財政調整基金を取り崩すことを河村市長は批判していたが結局は「貯金」に手を付けることになる可能性も。

6. 事業目的があいまい
商業事業者の支援なのか、コロナ禍の市民生活支援なのか、それとも電子マネー事業者の支援なのかはっきりしない。両立させたければ、システム上の制約が多いキャッシュレス決済はなじまない。紙の商品券方式でやっていれば、生活支援にも商業等事業者支援にもなっていた。また、紙の商品券方式なら、電子決済システム構築の必要もないことから、年内には全市民に配布することが可能だった。

7. 転売して稼ぐことも可能
購入したプレミアム商品券をネットオークションや金券ショップなどへの持ち込みにより転売することも可能。しかし、転売を禁止する措置が盛り込まれていない。家族5人なら10万5,000円分のプレミア。金券ショッブでプレミアム商品券を売却するなど転売ヤーがはびこる可能性も。

■ 地域経済活性化促進事業の概要(令和3年11月定例会)
〇 趣旨
新型コロナウイルス感染症の影響を受けて厳しい経済情勢にある中、消費喚起及びキャッシュレス決済の利用促進による地域経済の活性化を図るため、スマートフォンを活用した電子商品券へのポイント付与と紙のプレミアム商品券の発行を実施する。

〇 予算額
令和3年度 230万円
令和4年度 65億500万円(うちプレミア分50億4,000万円)

〇 内容
電子商品券
 発行総額 109億2,000万円(84万口)
 ポイント付与率 30%
 ポイント付与額 25億2,000万円
紙のプレミアム商品券(84万口)
 発行総額 109億2,000万円
 プレミアム率 30%
 プレミアム額 25億2,000万円

〇 対象
市内在住者

〇 販売価格
電子商品券は1口13,000円分を10,000円で販売。紙のプレミアム商品券は1冊13,000円分を10,000円で販売

〇 販売方法
事前申し込みによる抽選販売(電子または紙のどちらか一方を選択したうえで、1人7口または7冊まで。)

〇 利用店舗
市内の事業参加店舗

〇 利用期間
令和4年6月18日(予定)~令和5年1月31日(予定)
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横井利明
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