感染症の危機管理:新型インフルエンザ対応の教訓(8)水際対策の意味

 2009年の新型インフルエンザ当時の危機管理を今から振り返ると、水際対策を重点的に実行したため、渡航歴重視の検査態勢となってしまっていたし、国民もメディアも当然ながら水際作戦を前提にした思考方法に染まってしまっていた。 水際対策はあくまでも時間稼ぎであり、その効果には限界があり、検疫の網にかからずにウイルスが侵入することは想定してかからねばならない。 しかし、実際は、渡航歴のある者などが相談に行く発熱外来からの検査依頼を優先することになってしまい、通常の外来に来る者を見落としがちになってしまう。幸い、診断した神戸の医師が、ひょっとしたらと思って患者の検体をPCR検査にかけたので、新型インフルエンザ感染が判明したのである。そして、PCR検査の結果が次々と判明し、5月16日中に、感染者が8人となった。 兵庫県、大阪府では、次々と感染者が確認されていき、18日未明までには、高校生や教諭ら84人の感染が新たに分かり、計92人という感染者数になった。関西はパニック状態になったと言ってもよい。 17日(日曜日)の夜には、旧知の間柄である大阪府の橋下徹知事は、私の携帯電話を鳴らしてきた。橋下は、大阪の状況を説明した、国の協力を要請してきた。具体的には、感染拡大防止のため、大阪府の高校、公立中学を1週間の休校に続きをみる

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