近年、人生の最期を迎える場所の傾向も変わってきました。
住み慣れた自宅で最期を迎える。という方が増えてきています。
病院ではなく、自宅で、家族や親しい人と一緒に最期を迎えたいという要望も増えています。
ただ、病院のような人員体制や医療設備のない在宅で行うターミナルケアには様々な障害があります。
家族の介護負担や緊急時の連絡体制、
そして医療や看護にかかわる人材の問題もあります。
在宅看取りを行うターミナルケアを積極的に展開する訪問診療のクリニックも増えています。
しかし、訪問診療医だけですべてを解決することはできません。
実際に医療的ケアを行うのは訪問看護師であり、
身体的な介護を行うのは訪問介護ヘルパーであり、
そしてそれらのサービスを調整する介護支援専門員(ケアマネジャー)。
これらの人材が整っていないと、最期を自宅で迎えるという願いをかなえることは難しくなります。
介護支援専門員が所属する居宅介護支援事業所についても、
末期がんなどの在宅ターミナルケアには積極的ではない事業所は多くあります。
昨年4月の介護保険法改正で在宅での訪問診療医や訪問看護師と連携しながら在宅看取りを行った居宅介護支援事業所に、報酬としてターミナルケア加算が算定できるようになりました。
ただ、この加算取得の要件を満たしている事業所は居宅介護支援事業所全体のわずか26.5%のみ。
在宅看取りを積極的に受ける事業所とそうでない事業所の差が大きく分かれたという印象です。
居宅介護事業所の受け取る介護報酬は一カ月の包括単位で、それに加算が加えられる体形になっていますが、
このターミナルケア加算で看取りを行ったことで得られる報酬は400単位のみ。
退院前カンファレンスを一回行うと得られる報酬が600単位、
要介護1の利用者を一カ月担当することで得られる報酬が1053単位であることを考えれば、
労力に対して低すぎる単位数の設定なのではないでしょうか。
訪問看護や訪問介護では末期がんなどで手厚い介護が必要な利用者であれば
訪問回数が増えるため、必要な人員体制が整っていれば受け入れを積極的に行う事業所は多くあります。
ただ、一カ月の定額報酬とわずかな加算しか報酬を得られない居宅介護支援事業所は
サービス利用期間が短くなることが予想される末期がんの利用者を最初から受け入れないという事例も多く、在宅で最期を見届けたい家族の希望を後押ししようとしないケアマネジャーも少なくありません。
また、遺族調査によれば、在宅でなくなるがん患者のうち、20%は介護保険サービスを利用せずに看取りを迎えています。
報酬体系のメリハリを考え、在宅看取りを支えるケアマネジメントが実践される環境を作るべきなのではないでしょうか。