ラインハルト・ハイドリッヒはヒムラーの右腕としてSSを牛耳った冷徹な男です。海軍将校であった彼は、不祥事で不名誉除隊処分を受けた後、1931年6月に親衛隊の指導者であるヒムラーに拾われ、SSが新設する情報部の責任者に抜擢されます。 その2週間前にはナチスに入党しています。背が高く、金髪碧眼の典型的アーリア人であるハイドリッヒは、ユダヤ人や政敵を弾圧していきます。そのため、「金髪の野獣(Die blonde Bestie)」と呼ばれます。 ヒトラーが政権に就くと、ヒムラーとともにハイドリッヒは順調に昇進し、ゲシュタポも傘下に収め、全国の政治警察権を握ります。そして、レームの粛清(1934年6月30日、長いナイフの夜)、「水晶の夜」(1938年11月9〜10日)などの残虐な事件にも関与します。そして、ユダヤ人問題の「最終解決」、つまりホロコーストの立案をします。 ハイドリッヒは、1941年には、占領したチェコ、つまりベーメン・メーレン保護領の副総督に就任します。そして、公開銃殺など過酷な弾圧を繰り返し、「プラハの虐殺者」と恐れられます。 1942年5月27日、ハイドリッヒは、プラハでチェコの抵抗組織によって暗殺されます。ベルリンで行われた葬儀で、ヒトラーはハイドリッヒのことを「鋼鉄の心臓を持つ男」と讃えました。ハイドリッヒの明晰な頭脳とヒムラーに忠実な姿勢を、ゲーリングは「HHhH」、つまり「Himmlers Hirn heißt Heydrich(ヒムラーの頭脳はハイドリッヒ)」と皮肉ります。 因みに、これをタイトルにした本が、ローラン・ビネ(高続きをみる『著作権保護のため、記事の一部のみ表示されております。』