新型コロナウイルスの歴史的役割

 新型コロナウイルスは、当初予想された以上の感染力で世界に拡大した。このウイルスは、潜伏期間が2週間と長く、無症状でも感染力が強いために、急速に感染拡大が広がったのである。 ワクチンが開発されるのには1年半は必要だというし、治療薬もまだできておらず、感染が収束するにはまだ時間がかかりそうである。ある集団の構成員の6〜7割が免疫を獲得すると感染が最終的に止まるが、この集団免疫獲得には数年は必要だろうと言われている。 人類の歴史は、感染症との戦いの歴史である。天然痘、ペスト、麻疹(はしか)、結核、エイズ、エボラ出血熱、SARS、MERS、インフルエンザと枚挙に暇がないが、私たちは、そのたびに病原体と熾烈な戦いを繰り広げ、何とか生き残ってきた。 ウイルスは取り憑くべき人間が存在しないと生存できないので、結局はいかにして共生するかという話になる。 疫病は、人々の生活に大きな影響を与え、歴史を塗り替えてきた。この点に関しては、すでに数多くの書籍が出版されているので参照してほしい。王朝の変遷などを辿る、いわゆる政治史のみならず、民衆の生活を掘り起こすフランスのアナール学派の歴史書も面白い。 感染症は人口を調整する機能を担ってきた。地球の資源には限りがあり、食料も無限に供給できるわけではない。しかし、地球の人口は増え続け、2019年続きをみる

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