こんばんは、我孫子市選出・千葉県議会議員の水野ゆうきです。
千葉県議会文教常任委員会の視察レポート②です。
今回は「沖縄県の学力向上への取り組み」と「『包括的教育を必要とする子(Inclusive Needs Child; IN-Child)』とインクルーシブ教育」について。
このテーマでは4か所を視察しました。
●沖縄県庁教育庁
※沖縄県議会議場にて
沖縄県教育庁義務教育課学力向上推進室から沖縄県が取り組んでいる『学力推進プロジェクト』について説明を受けました。
沖縄県の学力は全国水準と比較すると低いことから『児童生徒の学力水準を高め維持する』と明確に目標を打ち出しています。
成果目標として、小学校全教科において全国平均正答率以上の維持及び中学校全教科において全国水準まで向上させ、平均正答率30%未満の児童生徒の割合及び無解答率の減少等を掲げております。
『学力向上推進プロジェクト』では「授業改善6つの方策」を県全体で共通実践しています。
方策1:めざす授業像の共有
方策2:教材研究の充実
方策3:学力向上マネジメントの推進
方策4:学習を支える力の育成
方策5:集団づくり・自主性を高める取組の充実
方策6:教育行政による効果的な支援体制の構築
特に授業改善と学校組織マネジメントに関しては他県には見られない独自の取り組みをしておりまして、県教育庁が直接小中学校を200校訪問し、授業観察をし指導助言をする「学校支援訪問」や各種研修会等の実施、授業改善推進教師の活用・ブロック型研究会の実施しています。
また校長OBが「学校運営アドバイザー」として学校を直接訪問して助言等を行う支援をしています。
様々な取り組みの成果として小学校の平均正答率は右肩上がり。中学校も小学校程ではないですが、確実に向上しています。
結果を出している背景として、学校組織マネジメントが大きく関係しているとのことでした。
校長をリーダーとして学校職員全体でチームとなって取り組んでいる学校が成果を出している傾向があるそうです。
そして、実際に授業改善推進教師を活用している
●那覇市立寄宮中学校へ
寄宮中学校の校長先生と授業改善推進教師から現場の声を聞きました。今回お話しを聞かせていただいたのは英語の授業改善推進教師です。
授業改善推進教師がプランを作り、担当の先生と一緒に悩みながら授業改善に取り組んでいます。
次のテーマとして、午後は「『包括的教育を必要とする子(Inclusive Needs Child; IN-Child)』とインクルーシブ教育」をテーマとして
●琉球大学へ。
琉球大学では韓昌完教授より「IN-Child」に関する勉強会。
IN-Childとは、Inclusive Needs Childの略で、包括的な教育を必要とする子どものこと定義されています。
具体的には医療機関で診断された子ども(ADHD、ASD、SLDなど)だけでなく、診断を受けていなくとも学習上や生活上(家庭等)の困難があり、支援が必要な子どもも含み、更には取り巻く環境等により一時的であっても包括的な教育が必要な子どもも含まれます。
日本では、特別支援学校と分かれておりますが、フランスやフィンランドは日本とは全く異なっています。
例えばフランスでは、国が・・・・障害のある子ども、青年、成人が通常の場において就学するために必要な予算と人的な措置を行うこと、とされており、すべての障害のある、あるいは健康上の問題のある子ども、青年が居住地に最も近い通常学校に学籍を登録されます。登録後に訪問教育も可能ですし、療養施設に通うことも可能です。つまり、教育を受ける形態は学籍登録後に選択することができ、サービスは特別支援学校となっても卒業は学籍校となります。フランスは国が社会的責任を持つ仕組みとなっています。
そして、何よりも勉強になるのは世界一位の学力を誇るフィンランド教育。
フィンランドでは特別支援教育が通常教育の中で行われるべきものと考えられており、たとえ一人の児童が通常クラスで難しいと判断された場合でも特別支援教育を導入しなければならず、基礎教育課程にあるすべての児童生徒に学習支援を受ける権利があるとし、保育園においてもどんなに重度の障害であっても100%入所可能となっています。
フィンランドの授業は課題を出した後、好きなようにその課題に取り組ませています。友達と一緒にやっても良いですし、壁に向かって黙々と一人でやっても良いですし、要は自由にさせて子どもたちの個別ニーズに合わせた教育を行っています。
イタリアでは公立の特殊教育学校及び学校内にも特殊学級が存在しない国でして、完全インクルーシブ99.6%を実現しています。
通常クラスだと25名ですが、障がい児在籍時は1クラス20名定員としています。また支援教師も大学卒業後2年間のコースを修了することが必須とされています。特筆すべきことは、支援教師が「加配」という措置となり、複数学級担任制となっているのです。
韓教授のプロジェクトというのは、IN-Childの教育のためにプロジェクトチームと先生方がチームを組んでIN-Child一人ひとりの教育プランを作ることを目的としています。
IN-Child Record担当する子どもの様子を観察して項目にチェックをつけ、その結果を基にニーというズのパターン化及び細項目の分析を行うことで、子どもの特徴や教育的ニーズ、課題に合わせた「IN-Child個別の教育プラン」を提案するというもの。
実際に韓先生と研究室の皆様とともにインクルーシブ教育を導入している
●宜野湾市立嘉数中学校へ
こちらの学校は5年前は結構やんちゃな生徒が多かったとのことですが、学校内は素晴らしいほど綺麗でした。
特に、挨拶と掃除は徹底されているとのことで、すれ違う生徒の皆さんが必ず「こんにちは!」と声をかけてくれたのが印象的でした。
インクルーシブ教育を取り入れた背景として、学び残しの多い生徒がストレスを抱え、授業を妨害したり校内を徘徊する生徒もいたことから、生徒が何に対してどう困っているのかを的確に把握をし、教員の共通理解を図り、組織的な支援を必要としたこととのことでした。
手法としては、まずはクラスの一人一人を観察し、担任や学年職員がインチャイルドレコードの点数等を発表し、ケース会議を行います。
学校の様子を報告し、琉球大専門チームと意見交換を行い、支援の必要な生徒に対して手立てを講じていきます。
その過程では琉球大専門チームから専門的知見に基づいたアドバイス等をもらいながら、今後の方向性や支援方法を提案し、最終的に支援方法を決定していきます。
その具体的な支援手立てというのは、座席を工夫(先生が声をかけやすい位置)、声かけの工夫、友達の協力など、様々な形がありました。
実際に事例をご紹介していただいたのですが、今ではその生徒は模範生以上となっているとのことです。
学校全体の様子を見ると、明るくきれいで清々しい空気に包まれているのが見て取れました。
それだけでなく、教職員の皆様が生き生き仕事をされ、ひとりひとりの生徒を見守り向き合う姿勢が印象に残りました。
実は千葉県でも大網白里市にて実践されています。
千葉県に持ち帰り、しっかりと検証して千葉県ならではの教育を見出していきたいです。