共有個人名義の公民館を学区・町内会名義にかえるには

「ヨコイさん、学区公民館が老朽化したため解体したいと思うが、登記を調べると、公民館や土地の名義が当時学区の役員だった7人の共有となっていた。しかし、名義人が行方不明だったり、亡くなったりしていて、地権者の承諾を得ることができず困っている。」この学区の公民館は築50年以上。本来、学区の財産でありながら、耐震も行われていないため使用することもできない。こんな問題が各地で起こっている。

かつては、学区や公民会、町内会のような地縁による団体が集会施設として土地や建物を保有する場合、学区や町内会等に法人格がないため、学区や町内会の名義で不動産の登記をすることができなかった。そのため、学区・町内会の保有資産は、学区・町内会の会長や役員の方々の共有による個人名義で登記するしかなかった。

しかし、すでに当時から数十年が経過し、名義人だった学区役員等の死亡などにより、財産上の問題が生じている。

こうした問題を解消するため、平成3年4月に地方自治法の一部が改正され、学区や公民会、町内会など、地縁による団体として認可された(法人格を取得した)場合に、団体名義での登記ができるようになった。

しかし、この法改正では、すべての問題を解決することは困難だった。

例えば、名義人のうち、相続人がわかるものは、相続の放棄を求める承諾を相続人からいただいたうえで、法人登記に進むことができるが、相続人の所在が分からない等の理由により、不動産登記法に則った手続きをとることが難しく、認可地縁団体への移転登記が進まない問題が多く存在した。

そこで、平成27年4月、地方自治法の一部が改正され、認可地縁団体が保有する不動産に係る登記の特例が創設された。一定の条件を満たした認可地縁団体が所有する不動産については、認可地縁団体が地方公共団体へ公告申請し、地方公共団体は「公告した結果異議申出がなかった」ことを証する書面を交付することで、特例により不動産の移転登記が可能になった。つまり、長期間にわたって、名義人やその相続人が行方がわからなかった場合には、「所有不動産の登記移転等に係る公告」ののち、意義がなかった場合には、地縁団体名義での登記ができることになった。

現在、南区では、この特例等を活用し、当時の役員のみなさんによる個人による共有名義の土地を、学区や町内会等団体名義での登記に切り替える作業を進めつつある。年内には1つの学区と1つの町内会で、公民館の土地・建物の学区・町内会での登記手続きが完了する予定だ。

市内各地で未だにかなり多数の個人名義の公民館や集会所が残っている。その多くでは、名義人はすでに死亡または行方不明になっており、これら財産は民法上は相続人に相続されることから、放置すれば、将来、争いになる可能性が否定できない。これら個人名義の公民館等については、学区・町内会への移転登記を進めることも検討すべきだろう。
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横井利明
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