電子マネーによる200億円ポイント還元の行方は?
「電子マネーによるポイント還元で4年間で総額200億円、ひとり上限2万円をキャッシュバックする」という公約を掲げ当選した河村市長だが、9月17日(金)の名古屋市会本会議で名古屋市財政局長は、「財源を生み出すことは大変難しい課題であり、現時点で具体的な方策を想定していない。」と回答し、財源の見通しが立っていないことを認めた。
一方、200億円の財源に関し河村市長は、9月17日、記者団に対し「そりゃあできますよ。」と回答。「できる」と主張するものの、相変わらず財源を明示することはなかった。なお、河村市長は市長選の際、財源について「自然増収と行革」と説明しているが、新型コロナウイルス感染症による法人市民税、個人市民税の大幅な減収が見込まれる中、財政がわかっている人で自然増収があると考えている人はまずいない(笑)。ちなみに令和2年度名古屋市予算では、新型コロナウイルス感染症の影響で見積もった税収が確保できず、2月議会で77億円の減額補正を実施している。
さて、河村市長は11月議会に「ポイント還元200億円の補正予算案を提出する」ことを明らかにしている。ただ、何を提出するかは全く明らかにしていない。そこで、11月定例会に提出するとしている「電子マネーによるポイント還元」関連予算について、横井利明が勝手に想定してみた。
■ 11月議会に提出する「ポイント還元200億円の補正予算案」の想定
案① 調査費を計上
ポイント還元200億円の実施にあたりその効果やかかる事務費・システム改修費等を調査するための費用を予算に計上する。ひとまず調査費を設けることで、ポイント還元に手を付けたと市民に印象付けることができる。
案② 調査費・システム構築費
ポイント還元に係るシステムの開発費を11月議会に計上する。
案③ 調査費・システム構築費・ポイント還元分
調査費、システム改修費、初年度のポイント分50億円及び債務負担行為を11月議会に計上する。
案①なら必要な調査費は数百万円くらいか、また、案②であればおそらく数億円~20億円程度の予算が必要となるだろう。さらに案③なら60億円~70億円程度に別途、債務負担行為で150億円~180億円程度か。なお、令和2年度に実施したひとり10万円を配布した特別定額給付金では、システム改修費・事務費はあわせて20億円を必要としている。いずれにしても決済事業者との話し合いでシステム改修費・事務費は決まることになる。
■ 財源は
財源を心配する人は多い。ただ、案①であれば調査費に係る予算は数百万円程度。でも、「約束は果たした!議案として提出した。」と言い張ることは可能だ。
一方、案③であれば初年度でも60億円~70億円程の事業費が必要となる。その場合には、おそらく決算剰余金(現在30億円の残)、財政調整基金(現在高170億円)などの財源を充当することになるが、河村市長は基金を活用するとした横井利明の考えを真っ向から否定しており、案③は現時点では財源の確保が難しそうだ。
また、電子マネーによるポイント還元にあたり、どの事業者を選定するかにも関心を持たざるを得ない。河村市長は選挙中、ペイペイという具体的な事業者名を挙げていたが、数ある電子マネー事業者の中から正当な理由なくペイペイを選定することはあらぬ疑惑を招くことになる。いずれにしても、事業者も選定を目指しなりふり構わぬ争奪戦を繰り広げることが予想されるだけに、事業者選定のあり方にも注目が集まりそうだ。