道徳通(南区)に植えられていた街路樹(アオギリ)の根が歩道のインターロッキングを持ち上げ歩道がデコボコしたことで、歩道で転倒して救急車で病院へ搬送される高齢者が出た問題は、住民や南土木事務所を一気に突き動かした。
■ 道徳通における街路樹を取り巻く問題(平成24年度)
・街路樹の倒木が目立ってきた。
・枝の落下
・歩道の根上がりによる高齢者の転倒
・一気に落葉するため、近隣住民の落葉の清掃が大変
・木の幹や樹形が悪いことによる都市景観上の問題など
そこで、平成24年(2012年)、ほぼすべての街路樹で発生していた根上がりを改修する工事を多額の市税を投じて行うのではなく、この際、一気に街路樹を植え替え、街路樹のライフサイクルコスト全体を低減することを目指すことで土木事務所、地域住民が合意。つまり、「街路樹せん定などの年間維持管理費用が必要のない樹種」「樹形の美しい街路樹に植え替え都市景観の向上」「落葉などによる住民負担がゼロ」「歩道が値上がりでデコボコしにくい」樹種に植え替え、維持管理コストがゼロで落葉処理などの住民負担ゼロに近い「ハナミズキ」への植え替えが決まった。
翌年の平成25年度には、既存の街路樹を全撤去。ハナミズキを「赤い花」「白い花」交互に植える工事が行われた。
なお、平成25年度に植え替えを行って以来、8年間、道徳通の街路樹であるハナミズキのせん定は一度も行ってないばかりか、落葉に関する苦情も一度も聞いていない。
さらに、今から25年ほど前、すべての街路樹(アオギリ)を撤去し、ハナミズキに植え替えた泉楽通(南区)においても、それまで毎年のように実施していたせん定を25年間、一度も実施していないほか、地域住民から落葉に関する苦情等も全くなくなった。
さて、名古屋市では、134年前の明治 20 年に笹島街道(現在の広小路通)にシダレヤナギを植栽したのを始めに、高度成長期の昭和 40 年代以降、都市の基盤整備とともに本格的に街路樹の植栽を進めてきた。その結果、名古屋市の街路樹は現在では約9万7,000本となり、人口100万人以上の都市では、横浜市・東京都と並んで第1位の街路樹密度となっている。
一方、これまでに街路樹の大木化や老木化、生育環境の悪化により、倒木や落枝等による事故が発生するなど市民生活への影響が顕在化してきた。
そこで、大木化・老木化していく街路樹や維持管理の状況に対応するため、「緑の審議会」への諮問・答申を経て、平成27年度に「街路樹再生指針」を策定。健全な街路樹へと再生を図る取り組みが始まった。