住まいに困窮する高齢単身者

公営住宅は、憲法第25条(生存権の保障)の趣旨にのっとり、公営住宅法に基づき、国と地方公共団体が協力して、住宅に困窮する低額所得者に対し公営住宅。低廉な家賃で供給されるもの。昭和26年に「公営住宅法」が制定され、戦後の国民の住宅不足を解消するため、国と地方公共団体が協力して住宅供給を促進した。

現在名古屋市は約6万戸の市営住宅を抱えている。

■ 市営住宅の管理戸数・入居個数等(令和4年3月31日現在)
管理戸数 60,270戸
入居戸数 50,909戸
空家戸数 9,361戸

■ 空家戸数 9,361戸の内訳
・募集済み戸数1,260戸
・建替募集停止戸数3,867戸
・火災等募集停止戸数1,455戸
・次回募集対象戸数2,779戸

■ 高齢者を取り巻く賃貸住宅事情
さて、「大家からアパートを立ち退くように言われているが、移転先のアパートがなかなか見つからない。」といった単身の高齢者からの相談が後を絶たない。民間アパートの多くが入居時の年齢制限を設けているためだ。

■ 70歳の壁
「高齢者お断り」のアパートがなくならない大きな理由に、「賃借人が死亡した場合、賃貸借権が相続され厳密にはすべての相続人の同意が得られなければ残置物の撤去すらできない」という借地借家法の問題がある。そのため、単身高齢者を敬遠する大家が多いのが実態だ。

一方、市営住宅にはそのような問題がなく、高齢者の住まいの受け皿となっている。しかし、市営住宅の単身向けは低所得の60歳以上の高齢者または障がい者が対象。高齢単身向け住宅の抽選倍率は平均約10倍であり、何回申し込んでも当たらないとの苦情も少なくない。

不足する単身高齢者向け市営住宅と、空いていても単身高齢者を敬遠する民間アパート。ネックになっている家賃の差額と残置物の撤去ができない借地借家法の問題。もしこの課題を埋めることができれば、高齢単身者の住宅問題は大幅に改善するのだが...
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横井利明
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