現場を知ること、当事者の声を聞くことの大事さを痛感した「障害者医療の充実を」シンポジウム。国立八雲病院の現状を、ぜひ多くの方に知ってもらいたいのです。
私のブログでも何度か書いてきた、この問題。国立八雲病院には筋ジストロフィー120ベッド・重症心身障害120ベッドがあり、その長年の蓄積から「チーム八雲」と呼ばれるほどの医療体制がつくられてきました。この病院を頼って移り住む患者・家族や職員も少なくありません。ところが札幌・北海道医療センターと国立函館病院へ機能移転すると、国立病院機構が発表。来年8月に患者などの移送をおこなうと、先月に計画案も発表されたという経緯です。
広い北海道で病院機能が広がることは喜ばしいことですが、それが八雲病院をなくす理由とはなりません。移転の進め方も、この4年間ほどで患者・家族への説明会は3回に過ぎず、八雲に残りたいという要望は事実上、機構は聞き入れてきませんでした。職員に対しても同様で、八雲に家を持つ方などは移ることもできず、労働組合の調査では3分の1の職員が退職せざるを得ないと答えています。
そもそも筋ジスや重心の方の長距離移送は前例がないとのこと。それは命の心配がつきまとうからです。光や振動、到着しても初めての環境へのパニック、受け入れる職員も筋ジスや重心患者への経験を持っていないなど、本当に大丈夫かとの不安は素人の私でもわかるほど。福祉車両や救急車を使って移送するとの計画ですが、そんなに医師も看護師もいないし、まして退職者が3分の1も出て、どうやって医療体制を組めるというのでしょうか。
このような問題点について、筋ジス患者家族・重心障害患者家族から、聞いていて胸がつぶれるような不安が語られました。「病院は生活そのもの。国は障害者への思いのかけらもないのかと、悲しみが湧いてくる」「今の病棟は明るく開放的で災害時もベッドで移動できるのに、新しい病棟の図面を見て衝撃を受けた。再検討してもらえるよう意見を述べたのに『このままです』と検討さえもされなかった」「移送後も同じ医療を受けられるか心配。障害者に対して無関心なほど、不幸なことはありません」‥‥。
八雲病院の職員としてマイクを握った小松さんは「家族の話を聞きながら涙が出そうになった。多くの方に、おかしいと声にして広げてほしい」と呼びかけました。フロアーからも「患者は移送した瞬間から生活が始まるのに、本当にできるのか。機構には意見を聞いてほしいと、憤りの思いでいっぱい」「呼吸器が必要な患者を福祉車両で移送できるのか。心臓の薬が必要な人だっている」など八雲病院の職員が声をあげ、受け入れる側のセンター職員からも「何ヵ月かの研修で筋ジスや重心がわかるのか不安だ。時間をかけて『ある程度わかる』という状況にしてからでないと」と発言されました。
全医労本部・香月委員長があらためて問題の全体像を整理され、道医労連・鈴木緑委員長は自分の経験も例に「障害を持ちながらも、その人らしく生きられるのはいつもそばにいる看護師がいるから」と強調されて、「自分や家族が患者だったら、と想像力を持ってほしい。移送するにしても慣れるまで時間をかける必要があるし、だから八雲に後医療も必要です」との話は、私も含め参加者の誰もが納得したのではないでしょうか。
先だって立憲民主党・池田真紀衆議院議員と、日本共産党からは私が一言あいさつ。11月6日に機構へ要請した内容も紹介し、出されている要望をいっしょに実現する立場で日本共産党も力を尽くすと表明しました。なお、紙智子参議院議員は先月21日の委員会で「移転計画を既定路線として、強引に進めるようなことはするな」と質問しています(今日付の「しんぶん赤旗」日刊紙に掲載されています)。
命こそ尊重されるべき病院で、命の心配につながるような移送を進めていいのか。生活環境や医療体制を唐突に大きく変えることが、本当に患者や家族にとって適切なことなのか。多くの職員が、やりがいや技術を捨てざるを得ないようなことになっていいのか。来年8月に決まったこととして、合意なく進めるようなことは許されません。世論と運動が広がれば、今からでも見直すことはできるはずです。
八雲病院で起きていることは遠い世界のことでなく、身近な命の問題。今日の内容を国会へ反映させるべく、私も力を尽くしたい。
【今日の句】机上では 命の重み わかるまい