読了:『なぜ難民を受け入れるのか』

我孫子市選出・千葉県議会議員の水野ゆうきです。

 

本日は我孫子市民の皆様のご相談対応の1日でした。

細かい歩道等の改善箇所や我孫子にお住まいの外国のご家族が日本語ができず様々な申請が難しいということで、そのご家族のご近所の方からご連絡をいただきました。

まず、ご近所の方が外国のご家族を助けるために政治家に連絡するということまでできて良かったです。

 

私が帰国子女ということもあってか、実は外国の方や外国語教育に関するご相談は少なくなく、我孫子市内はバイリンガルの方が少なくないので、英語教育の重要性などの政策についてご助言をいただくこともあります。

ただ、英語以外の言語は私も知識がほぼなく、なかなか私が直接お役に立てず、行政にお願いするのが現実です。

その中でもウクライナの方々が避難された際、翻訳機が全くうまく翻訳されずに困っているのでなんとかしてほしいというご意見を受けたことがありました。

 

日本国内に住む外国人の人口は332万3374人で、前の年より32万9535人(11.01%)増えており、千葉県は6番目に外国の方が多いという統計が出ています。

 

日本に来る外国の方は永住する方やビジネスの関係で一時的に住んでいる方や留学生、避難されてきた方、難民認定された方など様々です。

 

ウクライナ侵攻の際、日本は多くの避難民を受け入れており、千葉県はもちろんのこと各自治体でも支援がなされています。

 

そこで、私自身、難民問題について政治家として知識を深めるためにこちらを読みました。

 

『なぜ難民を受け入れるのか』

橋本直子さん著

 

地方議会で取り上げられることがほぼない難民問題。

日本が加入している遵守義務がある『難民条約』の具体的な中身や現状、また難民受け入れ制度の空白地帯であるアジアは国際社会において難民の課題にどう向き合うべきか、そしてその人道と国益のバランスはどうあるべきなのか、世界の難民を受け入れてきた米国や北欧諸国の実態と背景を読み解きながら、「難民鎖国」と言われてきた日本の難民受け入れ政策の実情と今後について入門書的に書かれた本です。

 

そもそも日本も締結している難民条約の上での難民の定義は戦時か平時かを問わず、差別に基づく迫害のおそれがあるということが重要です。

難民を受け入れる手段や「難民」と「移民」との決定的な違い(
)、難民認定を求める申請をあえてせずに留学やビジネスの資格で滞在する背景、日本の難民認定率の低さ、受け入れ国の財政負担や支援プログラムなどの解説書としても勉強になりました。

 

移民:どの国も受入れなければならないという国際法上の義務はない。

難民:いったん難民(である可能性のある人)が別の国の管轄権内に入ったら、その人が難民ではない(難民に値しない)と認定されるまで、迫害の危険がある国に絶対に追い返してはならないという国際法上の大原則が存在する=「ノン・ルフールマン原則

 

そもそも難民の受入れ方法は主に3つに分けられます。

①潜在的な受入れ国まで自力でたどり着いた難民による庇護申請を受入れ国の政府が受動的に審査した上で何らかの在留資格を与える方法

②まだ他国にいる難民を受入国側が選んで能動的・積極的につれてきて何らかの在留資格を与える方法

③本国からの直接退避

 

UNHCRの推計によると2022年末時点で世界では約540万人の庇護申請者がおり、新規庇護申請を最も受理したのが米国、続いてドイツ、コスタリカ、スペイン・メキシコとなっています。

 

ちなみに日本の具体的な実績としては1982年1月1日から2023年12月31日までに10万5,487人が庇護申請を行い、うち難民条約上の難民と認定されたのは1,420人。別途、難民の定義には当てはまらないと法務省が判断したが、何らかの人道的な理由があるということで累計6,054人に特別に在留が許可されています。

難民発生について、国際社会は難民保護体制を標準装備する必要があり、そうでないと大量の難民がどの国にも漂流し続け、非人道的であると同時に国際社会全体にとって不安定要因になりかねないことを著者は訴えています。

 

難民を多く受け入れる諸外国の背景としては、もともと国家として人道主義を実践してきた歴史や伝統がある国であったり、国際社会における負担分担制度においての責任を果たすためや、中長期的な人口減少対策の側面もあります。

 

千葉県議会では同会派の石川りょう県議(船橋市)の質問にも注目しています。石川県議は海外の大学院を卒業し、外務省、JICA青年海外協力隊といった経歴の持ち主で、一般質問において、外国人を労働力とだけみなすことではなく、地域で一緒に生活をする住民であるという共生の視点が大切であることを一般質問で行っています。

 

日本は「シリア難民危機」の際、最大150人のシリア人を大学院レベルの留学生として受け入れることが決定されたわけですが、受入れ対象者はシリア人の若者のうち選りすぐりのエリートだけです。

難民保護は迫害のおそれがあり、特に脆弱な立場に置かれた人を優先的に受け入れることが趣旨であるにも関わらず、優秀な中等の人材を少数受け入れるというのは人道よりも国益を重視した施策となっていることにも本では触れています。

 

歴史的背景を紐解きながら難民保護の世界情勢と日本の差を学ぶことにより、感情的ではなく事実に基づいたデータ分析を行った上で、日本が難民条約締結国としてどのように難民政策に取り組んでいくべきかを引き続き考察していきたいと思います。